溺れる


 恋人よ
 ぼくに 花の名をつけてくれはすまいか、
 いいえ、
 ぼくを 貴女の花としてくれはすまいか。
 ぼくの名を呼んで、
 恋人よ
 貴女しか識ることのない、わが花の名を呼んでくれはすまいか。
 わが身は貴女の花となり、翳として抱きすくめられ、
 すればわが躰 恋人よ 貴女という
 青みがかった聖地に捧げられ さながら侍らせられるよう。

 疎外にむせぶ ぼくの空白を、
 恋人よ
 貴女という光で いっぱいに満たしてくれはすまいか、
 貴女という神殿に 磔にされ 否定の鞭に刻まれ
 そしてわが花の名 いくたびも身を折って呼びながら、
 孤独の関節 ほぐれ 仮面砕かれ 生のままに
 生と死の際 彼方よりどっと打ち寄せる音楽のままに、
 果てへ 果てへと連れ込んでくれはすまいか。
 恋人よ なきひとよ 虚数としての 彼方の貴女。

溺れる

溺れる

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-04-22

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