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プロフィール
狐塚 翔太朗 (こづか しょうたろう)
・Age:16/height:188/since:3.24
・髪:ストロベリーブロンド/瞳:コバルトグリーン
・2-S/会長/人気ランキング2位
神宮寺 龍斗(じんぐうじ りゅうと)
・Age:17/height:192/since:10.23
・髪:漆黒/瞳:銀朱
・2-S/風紀委員長/人気ランキング1位
随時更新いたします。
1
今では聞くことも無くなった“仲間”の声。
誰に対しても丁寧なその物言いの副会長。仕事をしろだの無断欠課するなだの口の煩い其奴は、気配りが上手く真面目だ。口では文句を言いながらも結局最後は世話を焼く。
いつもへらへらと笑みを浮かべている会計。緩いその口調や態度の所為で此方を苛立たせるのが上手いものの、場の雰囲気を和ますのが得意で課せられた仕事もしっかりこなす。
寡黙で表情の変化が乏しい書記。何を考えているか分かり辛いが、凛としたその立ち振る舞い、固い意0志を持っており客観的に物事を捉えることに長けていて頼りになる。
子供のように無邪気な双子の総務。瓜二つな彼らはいつも二人一緒に悪戯をし人を困らせるのを愉しんでおり厄介だ。けれども、発想やセンスが良く的確な発言に何度か助けられている。
騒がしいが退屈しないその時間というのは呆気無いもので脆く壊されやすかった。
そして、幸せは己の手から零れ落ちてしまったときに実感でき、それは掬い上げようとしても砂が混じって元には簡単に戻らないもの。
2
「会長、何時になったら仕事してくれるんです?」
「副会長ー、無駄じゃなーい?会長が仕事してるところなんて俺見たことないしー。」
「……言い過ぎだ。」
「「でもでも、会計の言ってること間違ってないよっ」」
「だってさ」
「書記だって」
「「見たこと無いでしょ?」」
かたかたとキーボードの軽快なそのタイピングの音や書類にペンを走らす音が止まぬその空間で、役員たちが次々と言葉を紡いでいく。会長である己は仕事をするでもなくただ偉そうに椅子に腰を掛けて足を組み眺めていた。
別に仕事を全くしていない訳ではない。此処で遣りたくないだけだ。役員たちの仕事が終わり、寮の自室へと帰れば数少ないその書類を片付けている。同じ生徒会と言えども会社のように極秘書類というものが存在しているために、社長―つまりは会長だけが見られる其の書類は周りに押し付けることも出来ないからだ。他の書類を押し付けている為にそう思われても仕方のないことだが。
「うっせぇよ、とっとと終わらせろ」
人に言える立場でないことは重々承知の上だが、今更訂正するつもりもない。
俺の為に働くのは当然だろう。横暴だ?知ったことじゃない。選んだのは此処の生徒だ。精々俺を選んだことを悔やめばいい。
何やら不満げな、しかしもう諦めてしまったようなその5人分の視線を浴びて僅かに表情を歪めては、コンコンとノックの音が鳴り響く。そして此方の応答なども待たずに扉が開かれれば其処に立っていたのは風紀委員長だった。
役員らも好まないが、こいつは嫌いだ。理由を問われたところで、存在そのものとしか答えようがない。
「何の用だよ、風紀委員長」
「はァ!?態々てめぇの為に出向いてやってんだろうが!」
顔を合わせる毎に毎回目の前の風紀委員長はつっかかってくる。俺のことを嫌悪し、罵倒の言葉を口にし、軽蔑の視線を送ってくる。これならばまだ役員たちの方が可愛いものだ。
顔立ちが整っていて己よりも人気なのも気に食わない。
ばん、と己の机の上に其の書類を叩きつけられるも其れを一瞥すれば鼻で笑って。
「!…っ…てめぇ、」
俺と対等な奴など居ないのだから、己を”愛してくれない”なら、ただ足掻き続ければいい。
と、そこで周りの役員たちの視線が此方に向いていることに気付く。あぁ、鬱陶しい。不安げに此方を見遣るそれらが――。続いた風紀委員長の言葉に今まで逃げ続けてきた現実世界と戻された。
“お前なんか大嫌いだ。”
つきり…、と胸の奥が痛むのを気付かぬふりをして、風紀委員長を睨めば同時に見えた壁に掛けられた時計により現在の時刻を知ると舌打ちをひとつ。
「おい、今日の分終わってんだろ?だったらてめぇらも帰りやがれ。気分悪ぃから帰る。」
そう言葉を投げ捨てては戸惑った声をあげる役員たちや、引き止めようとする風紀の腕を無視して生徒会室から出ていきもやもやと収まらない気持ちさえもないものとして部屋へ足を運ぶ。ラフな格好へと着替えてはベッドにぽふん、と身を委ねて。…其の日を境に役員たちの顔を見なくなった。
3
翌日、目を覚ましてみるともう既に陽は暮れていて苛立たしげに舌打ちをひとつ。身支度を済ましては書類を片付けて理事の元へと赴き、そこで新しく今日付けで此処の生徒となるものが来たとの知らせを受ける。転入生だのというものは今まで此処で過ごしてきた中で初めてだが、本来であれば事前に書類が来るものではないか。
「悪いね、私にとって甥にあたる子で強く言えなかったんだ。…君らの日常に大きく支障をきたすかもしれない。この学園のこと、頼んだよ…翔太朗君」
だから理事は苦手だ。己の言わんとしていることをすぐ汲み取ってしまう。軽く目を伏せて短く肯定の意を告げては逃げるかの如く生徒会室へと向かって。
しかし、其処に待っていたのはいつもの“仲間”ではなく一日分の書類の山。可笑しい。今はもう放課後だ。転入生への案内は午前中に済ませたと言っていたし、いつもであればもう仕事をしている時間の筈だ。不幸というものは望まずとも続いていっていくものだ。
人と異なる色を持つその髪をくしゃりとさせては溜息を零しつつ書類を区分けして。今日中に提出しなければならないものから手を付け始めて、全ての書類を書き終えたのは閉門ぎりぎりであった。担当の者へと提出をし、生徒会室へと戻ってくればそのまま机に突っ伏した状態で意識を飛ばしてしまい。
それから一週間と日が経ったものの誰ひとり戻って来ない。しかしいつもよりも確実に多いその書類の山に其れの内容を見ていれば学園内に何が起こったか、そんなことは当事者でなくとも丸わかりだ。
現状を一気に突き付けられた気分だ。さすがに6人、否実質5人で回していた書類をひとりで全て片付けることは困難に近いもので、食事をまともに取る時間も無い。栄養の偏る食事を続けていれば精神的なストレスに加えて身体的な疲れもたまっていく。書類を提出すべくふらふらとした足取りにて夕陽の仄かな橙色に染まる校舎の階段を降りていれば後方から声を掛けられた。
「よォ、会長サン。上がしっかりしねェから生徒の見本となり得るてめぇの駒が調子に乗るんだ。首輪でも付けといた方が良かったんじゃねェの。」
4
久しぶりに逢った会長―狐塚翔太朗―は目に見えてやつれていた。
一週間前、突如転入してきた畠山空は数々の変化を齎していった。結果として悪い方向に―…。
案内をした副会長は”笑顔が嘘臭い”と言われて気に入り頬に口付けを。其れに興味を持ったらしい会長を除く他の4人と副会長が転入生を求めて昼に食堂へと足を運んできた。会計には”友達になってやるからセフレを止めろ”、書記には”無理して話さなくても俺が分かってやる”、そして総務の2人を見分けてしまった。此処で会長が居なかったのが唯一の救いだろう。その他にも転入生と同じく1年の一匹狼と呼ばれる不良やバスケのエースまでもを虜にした。
当然親衛隊らから反感を買い、其の編入生とそれに巻き込まれた同室の田中優が制裁に遭って居るというわけだ。転入生は喧嘩が強いらしく親衛隊が頼んだ不良らを簡単に伸してしまった。
暴力沙汰に無断欠課。よくもまあ此処までしておいて”自分は悪くない”と断言できるものだ。
そうして苛立ちが募りに募った放課後に会長と出逢ってしまい、ついいつもよりも増して皮肉が口から出てしまう。…―だが、此方をゆっくりと向いた其の顔には何の感情も籠っていなかった。ただ口からは自分の意志とは関係なく言葉がどんどんと出ていってしまう。相手を追い詰めているとも知らずに――。
「おい、何とか言ったらどうだ?」
「はっ…今更俺が何か言ったところであいつらが聞くかよ。現状がすべてだろ、…俺には何もねェ。てめぇみてェに人望もなければ…っ!」
心の叫びを初めて聞いたような気がした。次の瞬間に目に写り込んだのは足を滑らせて書類と共に宙に浮いた相手の其の体と何もかも諦めきった表情で、慌てて手を伸ばすも助けを求めていない其の手を掬う事は出来ずに、会長は体を床に打ちつけた。
白いベッドの上で眠る相手は人形の様であった。日本人離れした天然のストロベリーブロンドや、今は閉じられてしまって見ることのできないコバルトグリーンの瞳。相手は造形が整っており満場一致の美形だ。いつも不機嫌に歪められた表情に、高圧的な物言いや振る舞い。カリスマ性は申し分なかった。ただ、人を人と思わない其の態度にすべての生徒から慕われることはなかったのだが。
狐塚が目を覚ましたのは丸一日経った翌日の夕方で、頭を打ったのが原因か記憶を失っていた。
医者に言わせれば記憶を失った他には生活に支障を来すことはないらしい。
目を覚ますと戸惑ったような表情をした狐塚が居てその新鮮な顔にくすり、小さく笑いを零す。人らしい表情も出来たのか、などと感心しつつも己の服にと着替えさせ夕飯を食べながらゆっくりと説明をしていき。
5
俺は狐塚翔太朗という名前だそうだ。
此の学園の人気ランキングで2位に選ばれて生徒会長となったようだ。両親はそれぞれ財閥、大企業の家庭で結婚するときに合併したらしい。
そして、此処は全寮制の男子校な為に同性愛者が多く、それが普通となっているよう。
そんな様々な説明を己のことを気遣ってかゆっくりと話してくれた風紀委員長、神宮寺龍斗の部屋で己は夕食を取っていた。
俺は昨晩校舎の階段で転び頭を打ったそうだ。そして当たり所が悪く記憶を失ってしまった。相手から聞かされる俺は自分勝手であり暴君との称号も相応しい最悪な性格だったようだ。相手の瞳は時折揺らぎ言い難そうにしていたところから、嘘はない様で全てが本当に起こった事実。眉を顰めて軽く俯いて。
こう知らないことが多過ぎる現状で相手の様な人が近くに居るというのはとても心が安らぐ。相手は自分を嫌っていても可笑しくはないのに、どうしてこんなに尽くしてくれるのだろうか。
朝食を食べ終わりソファへと並んで座っては、ちらりと相手を見遣る。
銀朱に染まったその瞳はとても綺麗で宝石の様だ。そして漆黒の髪とは正反対に適度な白さの肌のおかげで、高い身長にしなやかな筋肉のついた引き締まった体でも暑苦しさなどは感じられない。そして相手の顔立ちはとても整っていて美形だ。きっと誰と居ても何に囲まれてもそれは霞まないのだろう。
気がつけば相手の頬へと手を伸ばしていてその相手に腕を掴まれたことで正気に返り、罰の悪く感じてしまい今まで散々眺めていた相手から視線をふい、と逸らして。
6
突然手を掴まれてびくり、と肩を揺らし不安げに瞳を揺らした後に視線を逸らした姿は、今までの様な暴君さなど見受けられないただのひとりの人間だった。
そのまま相手をソファへと押し倒すと当然の様に相手から戸惑った声が上がる。
「…っな、に。」
倒れかけた体制を整えようとソファについた両腕を掴み、その上へと乗っかれば身動きがとれないようにして。少しでも動いたら触れてしまいそうな距離にある唇から吐息が触れ合う。
別にこれといって理由はない。強いて言えば記憶を無くす前の会長から受けた仕打ちへのちょっとした仕返しといったところだろう。
頬へと指を滑らせては滑らかな絹の様なその感触に少し驚く。そして何をされるか分からない恐怖に僅かながらも染まる瞳や困惑したように下がる眉尻に、口許にうっすらと弧を描いて。前髪を上げて額を曝け出して唇を寄せる。ゆっくりと距離を取り再度相手の表情を眺めては、かぁ…っと朱に染まっており自然と口許が緩んでいき。自分にいくら押さえられてるとはいえ、相手が本気で抵抗すればどうにかならないことも無い。自惚れでなければ、それは相手が自分を必要としているからだろう。
記憶も失い、幸い言葉は分かるものの右も左も分からないこの状況。そして通う学園の特異な部分を教えられたならば相手でなくとも人肌を求めることは人の性であり当然であろう。
加えて相手自身のことも説明しただけに、己の様に敵意を向けない者というのは益々惜しい筈だ。
相手の髪を梳くように指を絡ませてはそのまま頭を撫でればゆっくりと口を開いて。
「悪ぃ。…お前の反応が新鮮で、ついからかいたくなった」
「…―なんだよ、それ。俺でからかうな馬鹿」
なんだこれ、可愛い。ふい、と顔を背けて不貞腐れたように、拗ねたように口を尖らして言葉を零す相手は嗜虐心が擽られる。強くもない抵抗に加えられてそんな仕草がこのまま事に発展していいのかと期待してしまう。
経験はあるが、男をそういう目で見たことはない。それでも狐塚の様なものは支配したいと思っても仕方がないだろう。
戸惑いながらも子供の様に拗ねて瞳を僅かに鋭くされてはそのまま宥める様に撫で始めて。
記憶を失った相手への接し方はまだ良く分からないが、いつもとは違い悪友へと軽口を叩くようにからかえて何だか愉しい。
7
あの後狐塚からどき、自由にしてはソファの上で膝を抱えてそっぽを向いてしまった。拗ねてしまった相手を眺めていると横目で見てき、不機嫌そうな声を漏らす。
「なァ、もうやんねぇから機嫌直せよ。」
あぁ、もう。本当に調子が狂ってしまう。昨晩までとは違う狐塚に戸惑う。他はすべて下僕と考えている様な態度で、他人に無関心といった姿。俺には顔を合わせる度に不機嫌な面になる癖に、他の周りには無関心といったようで。…あぁ、笑った顔を見たことがない。
其れに比べて今は人間らしい表情をよくする。説明を受けてるときは戸惑ったように笑ったり、家族の話などには興味を示した表情をしたり、今は子供の様に拗ねていて。
何が遭ったらそんな風になってしまうんだ。
そんなにお前の過去は笑顔を奪うようなものだったのか。
…――如何してお前は死ぬかもしれないと思ったときに諦めた様な表情をしたんだ。
あれから幾らか謝ってみたものの許してくれそうな態度は一向にみせず困り果て、放っておけば自然と治るだろうと少し冷めてしまった珈琲へと手を伸ばしてマグカップへと視線を落とし。
「神宮寺、…悪い、違うんだ。……っ」
心なしか声が僅かに震えている様な気がするが、無視を決めて横目でちらりと見遣れば先程までの体勢を崩し縋るような視線を送っていた狐塚が己の態度に頼りなさげに視線を彷徨わす。
「お前しか頼れる人居ねェから、必死で…でも俺の反応見て楽しんでるって分かったら頭にきて、」
何か決意した様にきゅ、と目を瞑り俺の袖口を掴み俯いて言葉を零す狐塚からはぱたん、と垂れた獣耳と力なく下がっている尻尾が見えてしまう。
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