メタモルフォーゼ

 さかな、の、こえ。きこえる頃には、すこしだけからだが、腐っているかもしれない。きみの、いつもは、なににも興味をもたない、うろんなまなざしが、夜空のひとつ、指先でつぶせるほど小さく、果てしなく遠いところにある星に、熱をむける。海。たゆたう。詩のおわりに、だれかの愛を紡いで、平和的な世界を編んでいくひとびとの、胸の裏に潜んでいるものが、弱々しく鳴いて。宇宙の朝。コーヒーにしずめる、角砂糖の個数を、ひたむきに数えていた、こどもの、こどもにしかみえない次元。あの星の光が、じつは、とんでもなく大昔のものであったり、おどろくほど未来のものであったりする可能性に、かるいめまいがして、きみを、愛する、という行為を一瞬だけ、わすれる。愛されたいと嘆くくせに、他者を愛することが疎かになる、その瞬間の、眼球にうつらないものがひしゃげる感覚、は。ねむっているあいだに、ときどき、思い出すよ。前触れなく。

メタモルフォーゼ

メタモルフォーゼ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-04-19

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