「お祓い箱」

 簡単に人間のクローンが作れる時代になった。すると、人間は恋愛をしなくなる。つまり、自分の好きな人の遺伝子配列さえ分かれば複製することができるので、無駄な恋の駆け引きや三角関係など必要なく自分の恋人を作ることができるのだ。恋人が作れるからといって将来が保証されるわけではないが、それでも日本の少子高齢化は急にブレーキがかかったように抑えられ日本のトップ達は大いに喜んだ。しかし、クローンには一つ大きな特徴がある。人間というのは不思議なもので、自分と全く同じ生き物がいると言う事実を知ってしまうとその事実を受け入れられず死を迎えてしまうのだ。人々はこれをアポトーシスと呼び、クローンを作った人間はクローンからそ̥の̥こ̥と̥を一生隠し通さなくてはならない。逆に言えば、不必要になったクローンを消すための手段としても使われる。
 と、ここまでいろいろ話してきたがこれは1部の人間の話であって、私と先輩のような最初から思い合っている人間には関係のない話だ。私たちはもう付き合って五年になるし、正直結婚も考えている。先輩は夫にするにはこの上ない位素敵な人だし、何より私をとても大切にしてくれる。先輩は小さい頃妹さんが行方不明になってしまったらしく、私はその妹さんに少し似ているらしい。妹さんの代わりにはなれないけれど、開いてしまった心の穴を少しでも埋められたら嬉しいと思う。
 数ヶ月後、なんと先輩の妹さんが見つかった。警察から連絡が入るなり先輩は私を置いてそのまま走っていってしまった。私も挨拶しなければ、と後を追う。そして目に入ったのは先輩と妹さんの感動の再会シーン。よかった。本当によかった。後ろから先輩の名を呼ぶと先輩は振り向き、そして「しまった」と言わんばかりの青い顔をした。直後先̥輩̥が̥妹̥だ̥と̥嘘̥を̥付̥い̥て̥い̥た̥女̥が振り向きこう言った。

「あれ…私?」

「お祓い箱」

人間のクローンを作ることは倫理的な問題があるので実現することは無いでしょうね…。

「お祓い箱」

  • 小説
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-04-14

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