焼場

同級生だった女の連れ合いが死に、彼女が喪主になって焼き場に、旦那の棺桶と一緒に来ていた。

その旦那も同級生だったけれど、どちらかと言えば優等生なタイプで俺とかとは違う世界の人種だった。
実は彼女とは、東京にいた時分に何度か映画やら演劇やら、お互いの好みが合ってデートっていうわけでもないけれど、友達づきあいって感じか?
そんな付き合いは、案外息苦しいだけでね。
彼女がそいつと付き合ってるの解ってて、又、俺と友達付き合いって言うのは、やっぱり、息苦しいもんでね。

三角関係なんてほどのもんでもなかったけれど、一応俺は彼女に苦しい胸のうちをコクってみたりもした。
そして、それっきり会うのをやめたのだったけれど。
やめていたけど、焼き場で彼女と再会した。
その旦那は、心筋梗塞かなんか突然の事だったらしい。
でもね彼女は涙を見せなかったな。

丸焦げの骨になった彼氏は、本当なら70歳の定年まで働いていたようだ。
一流企業のそれなりの地位にいたらしい。
彼女と一緒になって、こいつは幸福だったのかな?
彼女をものに出来なかった俺は?
丸焼けにして綺麗に残ったそいつの大腿骨をバラバラに砕きながら俺は自問していた。

焼場

焼場

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • サスペンス
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-04-13

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