狂愁
──だれかを断罪しているうちは、あなたは幸せにはなれない。
(いたずらに視界を拡げて、いたずらに傷ついている。あなたは、破れかぶれになっているの。あなたは、もはや、だれを、何を憎んでいるのか判っていないのよ。知りたいと強く思っていながら、知ることに酷く恐怖している。愛に焦がれていながら、それを軽蔑してもいる。救われたいと嘆くのは、嘆くこと自体が救いだからでしょう?救いなんかどこにもなくて、あるのは都合のいい解釈だけだということを、他のだれよりも自覚しているのに。もう、無闇に視界を拡げる必要なんてないのよ。敢えて視界を狭めることだって、ひとつの生き方でしょう?本当の苦痛から多くを知ったのだから、苦痛のふりまでする必要はないでしょう?)
私は、
あらゆる真実を知ろうとしてきた。たとえそれが、自分を苦しめる原因になろうとも。すべてに、名前など要らなかった。けれど、私たちは、名前を扱ってしか、関係する術を知らなかった。ただの名前に過ぎないものに傷つけられ、ひとつ、またひとつと痛みを知る。この痛みは、あなたの存在であり、私のすべてだった。この痛みが、あなたの存在が消えてしまうのなら、
私はもう、詩を書くのを辞めてもいい。
狂愁