狂愁

──だれかを断罪しているうちは、あなたは幸せにはなれない。

(いたずらに視界を拡げて、いたずらに傷ついている。あなたは、破れかぶれになっているの。あなたは、もはや、だれを、何を憎んでいるのか判っていないのよ。知りたいと強く思っていながら、知ることに酷く恐怖している。愛に焦がれていながら、それを軽蔑してもいる。救われたいと嘆くのは、嘆くこと自体が救いだからでしょう?救いなんかどこにもなくて、あるのは都合のいい解釈だけだということを、他のだれよりも自覚しているのに。もう、無闇に視界を拡げる必要なんてないのよ。敢えて視界を狭めることだって、ひとつの生き方でしょう?本当の苦痛から多くを知ったのだから、苦痛のふりまでする必要はないでしょう?)

私は、

あらゆる真実を知ろうとしてきた。たとえそれが、自分を苦しめる原因になろうとも。すべてに、名前など要らなかった。けれど、私たちは、名前を扱ってしか、関係する術を知らなかった。ただの名前に過ぎないものに傷つけられ、ひとつ、またひとつと痛みを知る。この痛みは、あなたの存在であり、私のすべてだった。この痛みが、あなたの存在が消えてしまうのなら、

私はもう、詩を書くのを辞めてもいい。

狂愁

狂愁

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-04-13

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