水月 

とても長編なので、話数に区切って投稿します。

第0話 〜私の中の私へ〜

「何がしたいの?」

6畳一間の小さい部屋、夕日が沈むか沈まないかの薄暗い時間、一人静かに思い耽っていたのだが、どうやら言葉に出ていたようだ…。

普通、“独り言”というのは、自分以外には聞かれるものでもなく、分かってくれるものでもなく、ただただ儚く消えてゆくものだ。

自分の思いや考え、疑問、葛藤などを、“言葉”にし、それを相手に投げかけ合うのが“会話”だとしたら、それに比べると“独り言”というのは、言葉の不発弾のようなものだろう。

「じゃあ君は何がしたいの?」

頭の中で声がした。…いや、“言葉”が生まれたと言うべきだろう。とにかく、疑問の答えを疑問で返されるほど、苛立ちをおぼえる事はない。

「特に今したい事なんてない。ただこうして緩やかな時間を過ごせれば、“僕”は満足」

「年寄りみたいだね。若者の言うセリフじゃないね。“ぼく”ならしたい事いっぱいあるけどね!」

声無き会話の中、例えば?と、聞いてみる。

「うーん。これはしたい事じゃなくて、して欲しい事、かな!」

「何?して欲しい事って」


「…しばらく“交代”して欲しい。行きたい場所があるんだ。自分の足で、行きたい場所が…」


ゆっくりと、ゆっくりと沈みゆく意識の中、また言葉が生まれた。

「昔話をしてあげる。楽しかった“あの頃”の話を…。退屈しないで済むでしょ?」


“止めておけばいいのに…”

水月 

水月 

古くから続く霊能力者の家系に生まれたとある少年。歴代の霊能力者の中で極めて霊力が高かった彼は、11代目次期当主に相応しいか試されることに。 神社の巫女である彼女と、笑ったり泣いたりお互い支え合いながら成長してゆく、生者と死者が紡ぐ“命”の尊さを描いた、現役霊能力者が伝えるノンフィクションストーリー

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-26

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