「color the flower」

 ニコイチ、おソロ、双子コーデ。女の子ってそういう類のものが大好きだ。まあ私は大して好きではない。が、彼女に付き合わされてやっている。彼女というのは私の小さい頃からの幼馴染だ。無頓着な私と違って女の子らしいものとお花が大好きな彼女は「一緒じゃなきゃ」が口癖で、すっかり私のスマホの待ち受けやアイコン、キーホルダーなんかは彼女色に染まってしまっている。彼女は特にスイートピーが好きらしく、それモチーフのピアスやネックレスをよく身につけている。
 「あれ?また新しいピアス買ったの?それも可愛いね。」私が言うと彼女は少し顔を赤らめながら答える。「だって、スイートピーって私達みたいだもん。」…意味がよく分からないがまあ彼女が満足げなので良しとしよう。「そうだ、」私は続ける。「実は…恋人が出来たんだ。今日ここに連れてきてもいいかな?大学が違うから言えていなかったんだけど、一緒に住んでる友達だよって彼にも紹介しておきたいんだ。」彼女は一瞬顔を引き攣らせたように思えたがすぐに笑顔で承諾してくれた。やはり、いきなりは不味かっただろうか。
 ひとまずそんなこんなで、私は自分の恋人を彼女に紹介し終え、晴れて公認になった。いやなったはずだった。なんと次の日から全く彼と連絡がつかなくなったのだ。恋人を置いて音信不通になる奴なんて必要ない、と彼女は慰めてくれたけれどそれでも落ち込む私に彼女はこう言った。

「…あのね、私スイートピーが好きなんじゃなくて紫色のスイートピーが好きなんだぁ。例えあなたの周りからみんな居なくなっても、私だけはずっとそばに居てあげる。私たちはずーーーっと一緒じゃなきゃ、ね。」

 彼女の耳に咲く紫のそれが一段と色濃くなったような気がした。

「color the flower」

紫のスイートピーってC遺伝子とP遺伝子の二つが揃った時だけしか紫の色素を発現しないんです。どちらか一つでも欠けたら白色になっちゃう。「一緒じゃなきゃ」ダメなんです。ほら、なんか素敵でしょう?

「color the flower」

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • サスペンス
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-04-09

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