順番待ち

あおい はる

 あざやかな呼吸の、肺の、神経、繊維、肉体を構築する細やかなものに宿ってる、愛とか。脳みそを蹂躙する、夢とか、未来とか、希望とかいうものも、まとめてくるんと、めくるみたいに、ミル・クレープを上から一枚ずつ、フォークで丁寧に剥いでゆく、あらいぐまの、つぶらな瞳に、星がうつってる。地球、とはちがう、火星とも。水星、金星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星、と、知っている星だけを思い浮かべて、でも、なまえしか知らない星がほとんどじゃん、と思い直して、ぺろんと、ミル・クレープをクレープにして食べる、あらいぐまのようすを、ぼんやりと見ている。ああ、もう、どうにもならないことで、ぐだぐだ悩んでもしょうがないって、カウンター席でクリームソーダを飲んでいるひとが、ひとりごとのようにしゃべっていて、ちゃんと、カウンターの向こうの、ひげのマスターは、うんうんとうなずいているけれど。きっと、昨夜にとうとう機能を失った、となり町の話だろうと想うと、他人事ではないなって感じ。自然の摂理に、ぼくらにんげんは無力だ。あらいぐまも。こわいですねと、あらいぐまは言って、こわいけどしかたないよと、ぼくは言って、クリームソーダを飲んでいるひとが、どうせしぬなら恋してしにたいとつぶやきながら、さめざめと泣いてる。午後八時。

順番待ち

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-04-08

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