ニューオールド

 連絡網って、むかしは電話だったのにねぇと、しみじみ話している、スーパーマーケットのちいさなフードコートで、主婦と思しき女のひとびとが、きっと、家事のあいまの、ささやかな息抜きをたのしんでいるのを、なんとはなしに聞きながら、戦争ってなんだろうねとか言い出す、きみ。氷のいれすぎで、薄まったオレンジジュースと、もそもそするオールドファッション。夜明けに、てのひらからこぼれおちた、星の欠片を埋めて、お祈りした。かなしい、という気持ちが砕け散って、つめたくなって、すこしだけ温暖化が緩やかになって、慈しみの花が咲いて、それは、太古からの自然の理として芽生えたもので、そういうのに感動しているのだと、わたしはじぶんを俯瞰的に眺めたとき、きみはいつも、よくわかんないと首を傾げた。わたしも、きみのことはよくわかんない。メロンソーダを飲みながら、きみがしている、戦争とも連絡網ともまったくかんけいのない、ぎょうざの具はキャベツ派か白菜派かの議論をインターネットで見たんだけど正直どっちもおいしいからどっちでもいいじゃんと思った話を、わたしははんぶん無意識に聞き流していた。雑然としている夕暮れの町。

ニューオールド

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-04-05

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