破片

渡逢 遥

鏡を叩き割ったところで私の潔白が証明されるわけもなく、破片は心臓にまとわりついて離れてくれない、痛い、痛い。でも、この痛みだけが真実なんだ、きっとそうなんだ。たったひとりに消えない傷を刻みつけることができるなら、この心臓なんてくれてやる。自分の為に涙を流せないことくらい、とうの昔に割り切っていた。ひとの涙を掬いとることでしか、私は生に対しても、死に対しても誠実になれなかった。鏡の破片を涙で溶かして、新たな自分の器をかたどる。これで何回目だろう。私は世界をどれだけ憎み、どれだけ愛してきたのだろう。どうして憎み、どうして愛しているのだろう。葛藤も後悔もない人生に値打ちなんてありはしない。憎まれる覚悟と同じくらい、愛される覚悟をもって目の前のすべてに向き合え。向き合って、歯を食いしばって、不敵に笑いつづけろ。戦いつづけろ。転んでも立ち上がれ。転びつづけても立ち上がりつづけろ。あなたが全身に破片をまとって襲いかかってくる時、私は逃げも隠れもしない。とめどなく血を流し、尚も不敵に笑いながら、あなたを救うよ、と抱きしめてやる。

破片

破片

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-04-03

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