東京@
東京は出会いの場。
日本のあらゆる中心点で、出発点でもあり、なにかが巡り合わせられるには充分な場所である。
そして、日本の中心故に様々な人材・権力が集中し、効率的な都心としての機能が発達している。
人が集まるところには出会いがあり、出会いは出会わないと機能してくれないのだが、ここではそうではない。
しかし、それがどんな形をしてどう機能しているかは誰にも分からない。
出会いとは、色が色鮮やかでどれも素晴らしくあるように、出会いにも一括りにできない魅力が内包されている。
たとえばそれは赤のように鮮明で、青のように繊細で、緑のように穏やかで、そして虹色みたく出会い方は可能性に満ちあふれているのである。
素敵な出会いを求めずとも、必ずそこらに転がっている。見つけなくてもそこに当然にある。
あとは自分の身の振り方次第。
ある掲示板もそれはそう言えた。
基本誰でも歓迎するが「都民専用ホームページ」と書かれたサイトのトップページ、画像と自分のペンネームでその日のログインが可能な多目的掲示板。
【TOKYO COLOR】
真っ白な背景の画面で簡素な作りの入り口のEnterを押すと、広がるのはサイトを立ち上げた本人や貼られた風景や画像。それを何枚か閲覧できるようになっている。画面は日替わり制で写真が変わり、何日も同じ写真ではなく、投稿者の貼り出した写真からサイト主(ぬし)の特別ピックアップなんてものもある。
基準は主の気ままな判断だ。貼られるか貼られないかは主が決定し、参加者たちの密かな楽しみとなっている。
そしてそのページを下にストロークすると白枠で書き込み可能な画面が現れる。
その日あったこと、くだらないことを日常的に書き込む、いわば公開式交換日記といった感じである。
だが不思議とそれだけのことで話のネタは尽きない。
他の有名なチャットのような盛り上がりやかしましさあるワケではない。そういったサイトの常連は入室の面倒臭さでどこかに行ってしまうんだろう。
ただここでは、時間帯を違えたとして、参加者は他の参加者の日常の一部を見て何かしらを考えず無関心でいることはない。皆一様になにかしらコメントをのこしていくのである。
・・・不思議だ。
ここでは誰一人、完全な孤独なままであることがない。
やがて今日が終わりを迎え、新しい写真が今日も更新される。
ふらっとここに現れた入室者はきっと今日の写真は何だろうと画面に見入ったり、のんびり書き込む内容を考えたりするだろう。
独りではない日記が何年も続く人のような感覚なのだろう。
4月1日
春休みが終わる頃。
だが、何事にも転機は訪れるのだ。
それは抗いようがなく、立ち会うしかない。
4/1 AM 3:15
【投稿者】
さくら
【内容】
あたしはみなさんに黙っていたことを今日書こうと思います。
あたしはこうして書き込むようになる前から虐められていました。
比べるものがないですから、これまで受けた虐めが酷いかどうかは分かりません。
あたしが弱いからかもしれない、耐えれなかっただけかもしれない。
泣きたいくらい、つらかったんです。
泣いても治まらないくらい、つらかったんです。
そして皆さんが羨ましかったんです。
どうもすみません、明るくなれたのはこの中だけだったから、せめてにと思いました。
皆さんいままでありがとうございました。さようなら。
私は今日、いなくなります。
東京@