破滅の囀り

渡逢 遥

一羽の名も知らぬ鳥が、嘲笑うかの如く宙を裂き、一条の光を裂き、不完全な縫合を裂いた。その徹底した無慈悲さに私は陶然とし、憧憬さえ抱いた。狂うことでしかきみは生きられないよ、鳥は揶揄うように私の頭上を旋回している。私は莫迦みたいに口を開けながらそれを見上げている。目を離すことができずに、やがてそれは自分の一部ではないか、あるいは自分そのものではないかという閃きが生じ、ほどなくしてそれは確信に変わっていく。私はこうして魂の視力を奪われていく。

いつからか、破滅への道は四方八方に拓かれていた。私はそれが誤解であり錯覚であると判っていながら、みずから進んで誤解と錯覚の中に籠城していた。まるで、精神倒錯が快楽であるかのように。孤絶を深める道程で堆積していく澱は完璧な静謐さを湛えていた。私にしか視えない、私しか知らない城だった。私は城の最上階からかつての惨劇を眺めていた。いくら理性の優位性、正当性を説かれたところで、暴走する本能のまえでは理性など無力同然だった。私は鳥と、あるいは自身の暗部と結託していた。すべてを等しく傷つけたかった。それが私の自然愛であり、祝福だった。

すべての犠牲が滅び、平等に不幸な世界が訪れることを夢見ていた。忌み嫌っていた人生を久しく俯瞰したとき、はじめて悪くはないと思えた。心臓の鼓動を感じた。

失うものすら失うことは、死の象徴だった。

破滅の囀り

破滅の囀り

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-03-29

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