Cinemagic Opera

桐原 水刃

 わたしがいた季節がまだ透明な羽を残していた頃に、些細な浮遊感に溺れて、エッジに切り裂かれてしまったのなら、つまらない未来なんて来ない方がいいと言い切れる。僕は顔を取り替えて、夜明けを撃つ詐術師だ。ずっと瞳を開けることなどできなかった。灰色と碧色ばかり飛び交う地平線では、常世の輪郭にも手触りが生じるのに、なぜだか僕には体がないし、あなたの名前もわからない。いつになったら目覚めるのだろう。すでに鳥は巣立ち、鐘が鳴り響き、空にはなにもない。どうか愛しいひとに口づけをしたまま、すべてがそのままでありますように。しかし、風は朽ち、海は枯れ、星の止まる世を誰が儚むのか。風景は移り変わる。ありふれた悲しみを癒すかのように、命が止まる日まで。わたしはわたしのままで巡りたい。

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  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-03-29

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