柘榴-幻想私小説3

柘榴-幻想私小説3

不思議小説です。縦書きでお読みください。


 夕焼けが山の谷間に落ちていくところだ。
 ここもかなり山の深い深いところにある村のようだ。
 狢(むじな)のやつ、こんな村にも出没しているんだ。
 狢がなぜか急いでいる。夕暮れが近いかもしれない。あわてたやつめ、編傘茸の精となった吾を路に落っことした。吾は網傘茸を生やして、そこからにじり出た。
 そのとたん、普段の茶色いシャツに、茶色のコットンズボンをはいている吾になった。四十ちょっと前の頃なのだろうか。とすれば仕事場が新しいところに移って、一、二年ほどたった頃だ。皮のショルダーバックを肩にかけている。
 夢だと全く知らないところにも出没することができるのは面白いが、ここはどこだろう。
 田んぼの脇の用水路に沿った道を歩いている。
 「まってえ」
 かわいらしい女性の声が背中のほうから聞こえた。振り返ると、若い女性が駆けよってきた。ベージュの上着にこげ茶色のタイトスカート、白いブラウスと目立たないかっこうだ。
 見知った顔ではないが誰だろう。
 「はあー」
 吾が気の抜けた返事をしている。
 こちらが立ち止まると、追いついてきた女性は大きな目できょろりと吾を見上げた。
 「石榴の木しか生えていない山をご存知ないかしら」
 年のころ三十二、三だろうか。前歯が少しそり気味で、かわいらしい顔をしている。
 「私もはじめてなもので、知りませんが」
 「どうしたらいいのかしら」
 人懐っこい顔で聞かれても、困ったものである。
 「土地の人いませんでしたか」
 「バス停に壊れたタバコ屋さんがあったけど人がいないの」
 「すみません、僕はここがどこかもわからないんです」
 まさか夢の中とは言えない。
 女性は笑い出した。
 「ここは、秋田の鳥海山の近くよ」
 そうか、軽子の生まれた湯沢の近くじゃないか。吾はいきなりこんなところに現れたのだ。
 「どちらからいらしたのです」
 「あら、高尾よ」
 「東京のですか」
 「ええ、この近くに、石榴の木しか生えていない山があることを聞いたのよ。そこには、石榴を食べて生きている猫がすんでいるの。会いたいの」
 石榴は奇妙な果実だ。肉がはぜたところを連想させるからか、甘酸っぱさがそういわせたのか、あのルビーのような透明な実の味は人肉の味だそうだ。どくろとざくろは似ていなくもないが。
 そういえば吾の飯茶碗は白地に青の石榴の絵柄だ。高いものでものではないが好きな茶碗で、軽子が買ってくれたのだ。長い間使っていたが、縁がちょっと欠けた。猫の水飲み茶碗になった。次に金沢でなぜか有田焼の柘榴の絵柄の飯茶碗を買った。
 柘榴の木は子供の頃育った厚木の家にもあった。それは実が良くなったが、南平の我が家に植えた石榴の木は全く実をつけず、とうとう業を煮やして抜いてしまった。あまり日当たりの良いところではなかったためなのだろう。柘榴のせいにしてしまい悪いことをした。
 「一緒に探してくださらない」
 女性はきょろんと目を吾に向けて、笑窪を寄せている。
 成り行きだから仕方ないのさ。
 「ええ、いいですよ」
 と返事をしている自分に、おいおい、大丈夫かいと自分で心配している。実際どこにいったらいいのだろう。
 その時、
 「まってええ」
 と、また後ろから女性の声が聞こえた。
 先の女性が振り向いて返事をした。
「大丈夫よ、ゆっくりいらっしゃい」
 吾が後ろを振り向くと、先の女性より少し背の高い女性が、ゆっくりと歩いてきた。同じようにちょっと濃いベージュの上着に、焦げ茶色のタイトスカート、それに白いブラウスを着ている。美人だが。
「娘ですの」
 娘は我々に追いつくと、軽くお辞儀をして、にこにこと微笑んでいる。
「お腹に子供がいるの」
「そりゃ大変ですね」
 そう答えたものの、娘のお腹はまだ膨らんでいない。
 それはそうと、簡単に歩いていけるようなところに石榴の山があるのだろうか。心配をよそに、美形の母娘は吾の前を歩き始めた。
 でも、どうして柘榴の山に行くのだろう。後で聞いてみなければ。
 夕日が山の間に消えた。星が出ていない。月もない。まだ空は青いが、すぐにも真っ暗闇になるだろう。蝙蝠が飛んでいる。
 ふと前を見ると、母娘はすべるように前を行く。おかっぱのような頭の母親と、長い髪を後ろで束ね肩まで伸ばしている娘が、よりそうように、すーっとすべっていく。
 そうだ、さっきから、足を動かしていない。吾もそうだ。地面から少し浮き上がり、音も無く道の上を進んでいく。
 いきなり真っ暗になった。母子の後姿が消えた。声だけがした。
 「心配要りませんのよ」
 空中に白い蝙蝠が飛んでいる。それだけが唯一見えるものだ。
 暗闇の中で母のほうが白い蝙蝠に尋ねている。
 「石榴の山にいくにはどちらかしら」
 「鳥海山の頂上に行ったら、日の出の方向に降りていき、泉のところで月の方向に八日も歩けばいけるさ」
 白い蝙蝠はなんでもないさというように答えたが、なんと遠いところなんだろう。
 「ありがとう、これをあげるわ」
 母子がなにやら蝙蝠にやったらしい。
 白蝙蝠は四角い白いものを咥えていた。角砂糖をやったのだろうか。
 闇に目がなれ、母娘の後姿はどうやら見えるようになってきた。
 母娘が上にあがっていく。後をついていこうと思ったとたん、吾のからだもスーッと上っていく。
 「着いたわね」
 母親が振り向いた。そのときに、満天の星が頭上に輝きはじめ、吾の足は地をしっかりと踏みしめていた。
 「鳥海山の頂上なのですか」
 「ええ、もうすぐ日が昇りますわ」
 空が少し明るくなってきたと思うと、森の間から太陽が顔を出した。
 「さあ行きましょう」
 母娘が太陽のほうに歩き出した。そのとたんに、太陽は木々の間に沈んでしまい、また、満点の星が輝き始めた。
 もっと後光を拝んでいたいものだなあと、この忙しなさを嘆いていると、母親が振り向きもせず微笑んだ。
「お天道様が方角を教えてくれたのです。急がねばなりません。この子が子供を産まなければならないの」
 そのような理由があるのなら仕方が無い。子供を産むのは大事なことだ。しかし、なぜ柘榴しか生えていない山で子どもを産むのだろう。
 すべるように降りていくと、足元に宇宙があるように星空が映しだされている池に行き着いた。これが泉なのだろう。あまりにもきれいな水で、ちょっとすくって口に含んでみた。
 「あっ、飲んじゃいけないの」
 母親の忠告は遅かったようだ。吾は朦朧としてくると、自分が違う動物になったような気がした。まごうことなく、手足には茶色の毛がはえ、耳が伸び、髭が伸び、口がとんがって裂けた獣になっていた。
 「おほほ、可愛い猫ちゃんになっちゃったわね、しかたないわ」
 吾は女性に抱きかかえられた。白い指で喉のところをくすぐられ、吾を忘れてごろごろいった。真っ茶色の猫だ。
 「おほほほほ」
 母親は大きな目をきょろんと吾に向けた。どこかで見たことのある女性なのだが、という気がしてきた。
 空には大きな青く輝く月がでた。
 「行くわよ、母さん」
 娘が母親を促した。吾は母親の腕の中で抱っこされ、なんだか眠くなって来た。
 月の方向に進んでいくと、月は消え、星は消え、暗闇になった。
 吾はとうとう母親の腕の中で寝てしまった。
 寝ているというのは自分にとって時間が無くなることである。星間旅行では睡眠カプセルに入り、寝ていると何千光年の旅が一瞬になる。空想科学小説の場面の移動のひとつの手段でもある。時間は自分の意識の中にある。だから、寝てしまえば自分の時計は止まる。しかし、人間は他人の時間で生きているのだなあとつくづく思う。科学が作り出した二十四時間が基準だね。日の出から日の入りを一日にしていた昔にしても、お日様のご都合が、我々の時間を決めていたのだ。本当は自分の中に時間があるのだがね。
 夢の中の眠りの中の夢でそのような講義を聴いていた。講義をしていたのはどうも誰だかわからないが、千円札の野口英世のような気がする。一番よく会っていたからだろう。
 日の光ではっと気がつき、目が覚めた。
 あたり一面石榴の木で、実がなっている。はじけた裂け目からルビー色の実が宝石のように朝日に輝いている。その光がまた、別の石榴の実に反射して、あたり一面に、透明な血の色が輝いて吾を取り囲んでいる。
 石榴の山なのだなあ。
 女性が二人吾を見ている。そういえば母娘とともにここにきたのだが。おお、もう猫ではなく、自分にもどっている。石榴の林の中で横たわっていたのだ。
 「お目覚めね」
 母親がルビー色の液体で満たされたグラスをもってきた。
 「石榴のジュースよ」
 トマトのジュースがどろっとした重い血なら、石榴のジュースは流れていく新鮮な、しかも透明な血だ。
 口の中に満たされたのは、甘くすっぱく、少ししびれる、冷たい石榴のジュースだった。おいしい。
 「石榴の森の猫のところに行きましょう」
 母と娘は歩き出した。
 吾も立ち上がると、母娘の後をついた。
 石榴の森は、光がたくさん入り、とても明るい。丈の低い下草を踏みながら進んでいくと、石でできた小さな屋敷にたどり着いた。赤く輝く石でできている。柘榴石かと思ったが、そうではなさそうだ。
 母娘は入り口のドアを押して、中に入った。吾も入った。
 家の中は窓がまったく無いにもかかわらず光にあふれ明るい。光が曲折して通る性質の石らしい。だから、部屋の中が赤いルビーの色にそまっている。
 もう一つドアを押すと、中には黒い石の丸テーブルと、それを取り巻く黒い石の椅子があった。一つの椅子の上になにやら黒いものがうずくまっている。
 そいつが目を開けた。真っ赤な目を吾に向けた。大きな黒猫だ。
 「つれてきていただいたのよ」
 母親が大黒猫に言っている。
 「そいつは、お世話になりましたな、ありがとうございますな」
  大黒猫が吾に向かって頭を下げた。
 自分は何もできず、むしろ猫になって抱きかかえられてここに来たのだから、礼をいわれると恥ずかしい。
 大黒猫は大きな口を開け、真っ赤な歯をむき出しにして、愛想笑いを浮かべた。立ち上がると、大きく伸びをした拍子に、黒く大きな手に真っ赤な爪が五本輝いた。大黒猫はテーブルの上の石榴の実をほおばった。
 「いかがで」
 大黒猫は吾に椅子を薦め、母娘も椅子に腰掛けた。母娘は石榴をとると、二つに割り、黒石のテーブルの上に転がり出たルビー色の実をつまみ始めた。
 「石榴の実には女性ホルモンがあるのよ。女性にとって大事なホルモンなの、でも動物の女性ホルモンそのものではないの、植物エストロゲンというのよ。女性ホルモンと同じ働きをするのね。大豆にも、クローバにも、赤葡萄にもはいっているのよ。石榴の実には動物の女性ホルモンそのものが入っているともいわれているのよ」
 柘榴に卵巣があるのだろうか。確か女性ホルモンは卵巣からでると習ったような気がする。
 母娘は二つ目の実を割った。大黒猫が親子に声をかけている。
 「高尾から遠い旅でしたな」
 母親が柘榴の実をほおばりながら大黒猫にたずねた。
 「子授け石榴の木はどこでしょう」
 「山の頂上じゃ、あないしましょうかの」
 大黒猫が椅子から床に飛び降りた。母子も立ち上がり、吾も立ち上がって、その後を追った。大黒猫はのっしのっしと、石榴の山の頂上を目指していく。柘榴の木だらけだ。小さな山だからあまり時間はかからないだろう。
 はじけた実に日が当たり、きらきらと赤い実が輝く。どの木の上にも猫が枝に座っている。柘榴の実を手ではたいている。なにをしているのだろうか。
 「柘榴の実を守っているのでね」
 大黒猫が赤い爪で木の上の猫をさした。猫が一斉に赤い眼で我々を見た。
 何から守っているのだろう。
 風が吹いてきた。黄色い粉が舞い始めた。
 杉の花粉のようだが、あれは春先に飛ぶものだろう。
 「花粉ではない、杉の精だ、あいつらは柘榴の実にまとわりつくと、女性ホルモンをみんな吸っちまうんだ、女性ホルモンが木目をきれいにするんでね」
 柘榴の木の上の猫が、柘榴の実を手でぽぽんとたたくと、黄色い粉がふわりふわりと下に落ちていく。一つ一つ払い落としている。大変だなあ。
 山のてっぺんには一本の柘榴の木があった。大きな木かと思いきや、背の高さと同じくらいの小さなものである。吾の背丈は百七十センチほどである。
 大きな実が一つなっている。
 「これが子授けの実じゃ」
 大黒猫は果実の割れ目に手を入れた。器用なもんだ。ルビー色に輝く一粒を穿り出すと、「ほれ」娘のほうに差し出した。娘はその一粒を橙色の口紅をひいた唇の間に押し込んだ。「あまい」。そのとたんお腹が張り出してきた。
 我々は山を降りて、大黒猫の石の屋敷に戻った。
 「それじゃ子授けの部屋に案内するよ、娘さんついといで」
 「私はここでまっているわね、いい子を産みなさい」
 母親は娘を送り出した。
 大黒猫と娘が石の家に入っていく。
 吾は家の前の柘榴の木のふもとに腰をおろした。
 「私も高尾の近くに住んでいるのですよ。南平というところですが」
 「知ってますことよ、南平台の八号通りでしょう。前は十二号通りでしたね」
 その通りなのだ。長男の森根が生まれた一九八一年に府中の分倍河原のアパートから、南平の十二号通りの中古の一軒家に移り、二〇〇二年に八号通りに家を建てて移り住んだ。でもなぜこの女性は知っているのだろうか。
 女性はきょろんと目を向けた。やっぱり誰かに似ている。
 「ほほ、美町お嬢さんお元気」
  吾の娘の知り合いなのだろうか。
 「もう六十一にもなりますが、いまだ好きなことをやっています」
 「それはおよろしいこと、お世話になったもの」
 「美町にですか、どこでまた」
 「十二号通りのお宅」
 それでは吾も会ったことがあるのだなあ。でも思い出すことができない。小学か中学の同級生なのだろうか。
 「お名前はなんとおっしゃいます」
 そう聞いたとき、大黒猫の家の戸が開いて、娘が黒い布に包まれた赤子を抱きかかえてきた。
 「かあさん、うまれた、一匹よ」
 「初めてだからねえ、しょうがないよ」
 娘は母親のところに来ると、布に包まれているものを渡した。
 母親が布を開いて、赤子を見た。
 「おやかわいい、ほら、ごらんください」
 そう言って、吾に見せた
 生まれたばかりの三毛猫だ。見たことがある。
 とその赤子は、母親に抱かれたまま、むくむくと大人の猫にった。
 吾は驚いた。
 「蛍じゃないか」
 蛍は母親の手から下に飛び降りると、吾を見上げた。なつかしいな。
 「そうなの、蛍なの」
 母親と娘はぐずぐすと崩れ落ちると、三毛猫になった。
 「玉じゃないか」
 「小春じゃないか」
 たまは美町が小学校から帰ってくる途中、後について我が家にやってきた三毛猫である。後ろ足を怪我していて、びっこをひいていた。自動車事故にでもあったのだろう。飼い猫だったとみえて、人になついていた。その当時は無口な猫で、大きな目でこちらをみるだけであった。美町が飼いたくて、我が家の猫になった。
 玉はとても頭のいい猫で、人間の言葉がわかるのではないかと思うような振る舞いをした。腰を打ったのだろうから、子供は産めないものと思っていたが、我が家にやってきて三年目に数匹の子供を産んだ。その中に三毛猫が一匹いた。その三毛猫が家に残り、小春と名付けられた。生まれて八ヶ月でたった一匹の三毛猫を産んだ。今ここにいる「蛍」である。蛍は怖がりな猫で雷がなるとテーブルの下に隠れてしまうほどであった。小春は自分の子供がいるのに玉に甘えていた。みな思い出のある可愛い猫たちだ。
 「たま、小春、ほたる、会いたかったねえ」
 三匹三代の三毛猫が吾の周りにやってきた。
 頭をなぜると見上げてごろごろ喉をならした。夢っていいね。
 玉は十六で天寿を全うし、蛍は十八で死んだ。小春は蛍より長生きをして、二十歳で死んだ。小春は晩年、ぼけて、一日中大声で泣き叫んでいたが、死ぬときは静かであった。
 「三匹ともまた合えるとは思わなかったよ」
 「もしかすると、あの大黒猫は、うちの黒かい」
 「あの黒さんはちがうわ、うちの黒は大山にいるのよ、今は」
 三毛猫がいなくなった後は、真っ黒と真っ白の二匹が我が家の猫になった。夢の中で白は高尾山で会ったが、黒にはまだ会っていない。そうか、大山に行けば会えるかもしれない。
 「私たちは高尾に帰ります。これからはたびたび会うことができるでしょう」
 そうか、残念だが、夢でこのように会えるのなら嬉しいね。
 「元気でな」
 三匹の猫は柘榴を一つ咥えて帰っていった。
 きょろんとした目は「玉」だったんだなあ。可愛い女性になったものだ。小春はやはり美人なのだな。蛍が人になったのは見ることができなかったが、まじめな高校生ってとこかな。 
 大きな黒猫が赤い目をしてやってきた。
 「再会できてよかったですな、どうです、柘榴酒でも」
 「それはありがたい、さぞうまい酒でしょうな」
 赤い石の館に入り、黒い石のテーブルにつくと、大黒猫がクリスタルの器に柘榴酒をいれてもってきた。
 「二十年ものでしてな」
 吾の前におかれたグラスに柘榴酒をなみなみと注いだ。
 「夢の旅はまだまだ続くのでしょうから、柘榴のお酒で英気を養っていきなされや」
 大黒猫は自分のグラスにも柘榴酒をそそいだ。
 深紅の透明な酒が輝いている。
 「ありがたいことです」
 吾は頭を下げた。
 大黒猫とともに、グラスを持ち上げ、カチンと合わせると大黒猫の赤い目を見た。
 「乾杯」
 一気に飲み干した。うまい酒だ。
 大黒猫の赤い目が光った。
 とたん、目の前に黄色い粉が舞うのが見えた。杉の精が飛んでいる。
 柘榴の木になっている実の中にいるようだ。
 そうか、吾は柘榴の精になったんだ。
 柘榴の実の中はルビー色で気持がいい。長い間うっつらうっつらしていたのだが、いきなり、空に舞いあがった。
 泥棒ガラスのやつだ、吾の入った柘榴の実をくわえて空高く舞い上がっていく。眼下には柘榴の木の林が見える。ピカーッとルビー色に光っている。

柘榴-幻想私小説3

柘榴-幻想私小説3

アミガサタケの精になった吾は、鳥海山の近くを歩いていた。と、母娘といっしょになり、柘榴の山にいく

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-03-26

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