結婚

離れられ、なかった。
私には恋だった。
彼は私にとって、私は彼にとって唯一無二の運命だったんだと思う。

どうして、それを間違えたのだろう。
答えなど転がっていなかった。
決めるのは私だった。

とある彼は誰より博識で、なんでも知っていた。彼はいつも言う。あなたのことは何も知らない。あなたが僕を代償行為にしたことは知っている。でもね。ただ、幸せになってほしい。できればあなたの人生に少しでも関われたら嬉しいと笑う。

とある彼は運動神経抜群で私に夢を見せてくれた。一途に思うことの幸せを、恋の慣れ果てを見せてくれた。彼は言う、俺を選ばないのなら選ばないなりの傷をと。俺以上の人を選ばないのなら許さないと。そして、お前以上なんていないんだと。


とある彼は抱え切れないほどの愛情を私にくれた。私の話を最後まで聞いて、あなたが幸せになれるように助けると。彼は言う。道に迷ったら思い出してと。僕は君を幸せにはできないけれど、出来たら一緒にいたかったなと。


怖いくらい好きになった。
私は私でいられなかった。
幸せになるのが怖かったし、立ち止まることが怖かった。

彼は優しい人。人を支える人。とてもたくさんの愛情に囲まれているけれど、すごく寂しそうな人。
彼は言う。忘れさせてなんかやらないと。一生手放したことを悔やめと。それが君の選んだ道だと。
「でも、どうか幸せに。」

彼は少し怖い人。
私をまっすぐ見つけてくれた人。私に笑顔をくれた人。信じることの怖さを、大切さを教えてくれた人。
彼は言う。君が変わってくれないなら側にはいられないと。でも、あなたが僕を選んでくれるなら一生一緒にいようと。

彼女は傲慢だ。
賢しらな顔をして、正しいのは自分だと主張する。誰のことも選べないのに。
彼女は言う。私を探してと。嘘を暴いてと。
でも、それはしないで、気づかずそばで笑っていて、と。

ひどい二律背反をいつか、私は乗り越えられるだろうか。

「どうか、お幸せに。」

結婚

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  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-03-24

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