片恋

あおい はる

 呪い、みたいだ、だれかを好きになることは、囚われること。からだも、こころも、好きなひとの言葉、指の動きひとつに、反応する。よろこび、くるしむ。呼吸困難にもなるし、幸福感を垂れ流すこともある。獄につながれた、あやつり人形みたいなものだ。生きるも、死ぬも、好きなひと次第となると、もう、どうしようもない。
 星のゆがむ、音がする。
 それはあたりまえに、夜のできごとで、人気のない、シャッターのおりた駅のまえで、くるはずのない恋人を待っている、きみの、仄かな灯りに照らされた横顔を、そっとみているあいだ、刹那に、胸のすきまにはいりこんでくる、悪魔的な感情が、シンクロするように、ふるえる。コンビニで買った、ホットコーヒーが、ホットでなくなる頃に、きょうは帰るよと、さみしそうに微笑むきみに、あしたもここにくるの?、とはたずねない。きみは、そう、自然のことのように、あしたもここで待っているのだろうから。たとえば、きみの行動を、時間の無駄だと罵る者があらわれたら、ぼくは、無駄じゃないと反発し、きみをかばうのだ。土のなかでねむるひとたちの、ことを、ひそやかに想うのは、ひとりの夜に適している。きみがとなりにいるあいだは、ずっと、子どもの夢みたいなことばかり、かんがえていたいよ。

片恋

片恋

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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CC BY-NC-ND
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