各駅停車

川島 海

車窓のずっと向こうを見つめている
一瞬の幕間に短く呼吸をしながら
忘失のかけらを必死に追いかけている

大きな公園を汗だくになりながら駆け回る
誰にも教えていない祖父の特別な飴玉を
右足のポケットに忍ばせて
蹴り上げる太ももで確かめることで
いつか会うあなたを思っていた

あの飴玉が溶けてしまうまで輝いていた瞳が
かけた文字の間をすいすいと泳いでいる

裏山で一番太い木の枝を渡る
誰にも教えていない秘密の部屋の行き方を
こっそりとノートの端に書き記して
机の中に忘れて帰ることで
いつか会うあなたを思っていた

あの教室を去る日まで高鳴っていた心が
不規則な電飾の瞬きを飛び跳ねていく

飛び込んできた斜陽が
静かに寂しさを置いていく場所があることが
もう誰にとっても日常になったのだ

三番線から背を丸めた青年が乗ってくる

各駅停車

各駅停車

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-03-21

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