命の水
───声が止まない。
(正常、或いは異常で在りつづけるというのは有り得ない。すべてはグラデーションに過ぎない。自分が相対性の奴隷であるという事を自覚しなければならない。「自分」という檻からは決して出られないのだという事を、いつかは受け入れなければならない。
(尺度に依存してはならない。第一、「自分」という存在は流動的なのだから、そんな曖昧なものを尺度に用いてはならない。計測や計算を止めずして博愛、ましてや自己愛の実現などは有り得ない。
(「らしさ」という虚像に依存してはならない。理想に翻弄されたくなければ、自分を規定しなければいい。また、理想に幻滅したくなければ、誰の事も規定しなければいい。規定するから差異が気になり、一喜一憂するのである。
焦燥を感じながらも、その連鎖反応を愉しんでいたのは、他ならぬ私だった。
諸悪の根源は、私だった。
(ああ、もっと飲みたい。もっと言葉が飲みたい。)
───声が止まない。焦燥は収まらない。
命の水