白妙の夢

あおい はる

 波打ち際で、みていた。星。なにかが欠損してゆくばかりの、あの春の日に、失った恋たちをいつまでも指折りかぞえている、ネオ。白い花の絨毯に横たわり目を閉じることは、生命の循環を行うことに等しく、透明なドームのなかで、なんにんものひとが、ふるい肉体を手放し、あたらしい器をほしがる。夜のない国だ。夜明け、という言葉が、この世でいちばんうつくしいと思っていたのに、夜がないだなんて。朝、という存在の必要性も感じなくなり、トースターできつね色に焼いた食パンが、なんだか味気ないし、コーヒーは苦いばかりで、ゆでたまごの殻もうまくむけやしない。海が好きなネオは、ひまさえあれば砂浜を歩き、波打ち際で、ぼんやりと海をながめている。ネオは、いつか、海とひとつになる気がしている。帰還、というより、同期、に近い。交合、よりも、融合、がしっくりくる。重視するのは意味よりも、響きである。音。
 たいせつなだれかのことを忘れても、まあたらしい、純粋無垢な肉体を欲する、にんげんども。

白妙の夢

白妙の夢

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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CC BY-NC-ND
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