夢の裁断
都合のいい夢から醒めたくなかった
新たな希望をみつけるより
絶望に浸かっている方が楽だった
現状を絶望とみなす方が楽だった
得るために捨てるということができなかった
捨てたものに救われたかもしれなかったから
現状を変えるのが怖かった
変わることは 変わる前のすべてを
突き放すことだと思っていたから
私だけは 私を置き去りにしたくなかった
みずから捨てたのだということを忘れて
誰かのせいにするのは嫌だった
私は後ろを振り返ってばかりいる、それは
誰かを置き去りにしてきたかもしれないから
誰かを突き放してしまったかもしれないから
救えたはずの誰かを 殺してしまったかもしれないから
都合のいい夢から醒めたくなかった
何より恐れていたのは 自分に裏切られることだった
夢の裁断