夢の裁断

都合のいい夢から醒めたくなかった

新たな希望をみつけるより

絶望に浸かっている方が楽だった

現状を絶望とみなす方が楽だった

得るために捨てるということができなかった

捨てたものに救われたかもしれなかったから

現状を変えるのが怖かった

変わることは 変わる前のすべてを

突き放すことだと思っていたから

私だけは 私を置き去りにしたくなかった

みずから捨てたのだということを忘れて

誰かのせいにするのは嫌だった

私は後ろを振り返ってばかりいる、それは

誰かを置き去りにしてきたかもしれないから

誰かを突き放してしまったかもしれないから

救えたはずの誰かを 殺してしまったかもしれないから

都合のいい夢から醒めたくなかった

何より恐れていたのは 自分に裏切られることだった

夢の裁断

夢の裁断

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-03-16

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