恐怖の「紅い・クマ、。。だ」第1話
ショート、ショートなので、すぐ完結します。
被害者と犯人は、貴方はもう既に知ってるはずです。
ヒントは日曜日のテレビで・・・もうネタバレギリなので、失礼します。
今時の通報者
ピーパポパ「不審者、富士の樹海で確保、」
「本署、了解です」
パトカーの、後部座席に乗せられた男に、警官Xは見覚えがあったが思い出せずにいた。
通報は現在時刻より十五分前の午前二時、現場付近を通行中の車両から、市民からの携帯電話だった。
「あんまり、こうゆうの好きじゃないんだけど・・・上半身裸でふるえてんだよ、やばくねぇ」
本署は直ぐにバカからだと直感したが・・・
「もしもし、まず貴方の名前を教えてくれませんか?」
「健也で~す」やっぱりか!、本署は確認した。
「健也さんですね、エーそれで場所はどこか具体的に確認できますか?」伝わるだろうか?本署に不安が走った。
そして大した事件ではなさそうだ、でも病人かケガ人がいるらしい、邪険にはできない。
「エーここどこだ?とりあえず山梨県?ちょっと待ってよ」携帯片手に歩いている。
「エー国道139の・・・小菅村と奥多摩の境界の標識があるね」
ここ付近は静岡と山梨、そして多摩を管轄する東京都が絡み合った山奥、富士の樹海である。
思ったより正確な情報が返ってきて、本署は少し本気になった。
「健也さん、ありがとうございます、状況として上半身裸な不審者って事ですが、他に何かありますか?」
「なんか、呟いていて・・・意味わかんねけど『アカイ・クマ。。だ』ってね、ヤバい奴かと思ったけど、裸以外は、ちゃん
としてるからさぁ、ホームレスじゃないしさぁ、でもすごく怯えてんだよ」
「アカイ・・・クマ、熊に襲われた形跡ありますか?」
熊が出たなら、緊急配備しなくてはならない、現場付近のパトカー、そして応援も手配する必要がある。
「見たとこは怪我してないけどさぁ、とにかく怯えてんだよ、来てやってよ、救急車もいるべ?」
こうして警官X、警官Nは大月署から配備された。
「付近には熊が、出没しているらしい、十分に警戒して不審者確保お願いします」出動時の情報だった。
そして通報は正確だった、境界の標識付近にある自動販売機の影で、震えている男は直ぐに発見された。
そこには通報者健也が、バカ全開の服装で待っていたが、気にせず警官Xは質問を始めた。
「どうも、通報ありがとうございます、貴方が健也さんですね」
「そう、俺健也、よろしく」警官Xも名前を名乗った、少しやりにくいなぁと思いながら・・・
すると健也が話し出した「コーヒー買おうと思って車止めたらさぁ、この人がここで震えてんだ、それって放っておけないんじゃ、人としてさぁ」
確かにひどく怯えている男がいた、年齢は50歳前後、中肉中背、頭髪はきちっと散髪されている、上半身裸というより下着パンツ一枚だ。
「じゃあ俺行くから、」立ち去ろうとする健太に念のための免許提示を求めると以外にも素直に応じたので、
警官Xはひょっとして、事件じゃないのか、何かの胸騒ぎを覚えた。
職務質問
健也が、立ち去り警官Xは不審者に対し職務質問を始めなければならない。
「N先輩、どうします?」まだ配属されて、というか警官になってから半年の警官Xは指示を仰いだ。
「うん~そうだな、見たところ、いわゆる出歯ガメじゃないなからな!まず名前と住所は基本だろ?それに加害者の有無、そしてなぜ裸なのか?、それと熊も!」
確かに、変質者ではないと警官Xも感じていた。
「後ろの座席にとりあえず保護してからにしよう、トランクに毛布あったろう、死ぬほどの寒さじゃないけど!」
続けてN警官が指示し、警官Xはそれに従い毛布を敷いてから不審者を車の中に案内した。
「あの、立てますか?・・・ちょっと事情聴かせて貰ってもいいですか?」
最近の芸人がよく使う、(もらっても、いいですか?)いい回し、本人は丁寧語だと思っている。
不審者は震えながらも、警官だと理解したようだ、立ち上がりパトカーに乗った、だがまだ目は泳ぎがちでやはり挙動に落ち着きがない。
そして後部座席の毛布に包まり、辺りを警戒するような仕草をしている。
警官Xは無線連絡した。
「不審者、富士の樹海で確保、」「本署、了解です」
そして振り返り、質問を始めた。
「あの、クマっておしゃっていたそうですがクマに襲われたんですか?教えて貰ってもいいですか」
「クマ・・・赤い・・・クマだ」二人に緊張が走った。
しかし、赤が気になり念のためにもう一度確認したほうが良いと、警官Xは再び質問した。
「あの~クマって動物園とかに居るような、あのクマですか?教えて貰ってもいいですか?」
パトカーの中は暖かい、不審者の震えも少し落ち着いてきた。
「クマじゃない!・・・もっと・・・怖い・・・紅い・・・アクマ・・・だ」
不審者は絞り出すような声で、そこに誰かがいて話しかけるように喋った。
とても名前や住所を聞いて本人確認などできそうになかった。
アクマと聞いて警官XとNは顔を見合わせた、無言のうちに二人は精神異常を連想したが、
幸い暴れるような素振りもないので、本署に連絡した。
しかし警官Xはその喋り方に、どこか見覚えがあるような気がしていた。
「本署へ、先ほどの件、クマではありません、クマではありません、これより病院へ搬送します、どうぞ」
「了解、クマに対する緊急配備は中止、〇〇病院へ搬送お願いします」
不審者は〇〇病院へ移されて簡単な体調チェックされ医師から、精神安定剤が投与される、更に患者着が着せられると、
かなり落ち着いてきた。
「まずお名前、教えて貰ってもいいですか?」
「え・・えん・・えん・・・せん」
「えっ、えんせん、エンセンさんでいいですか?」
不審者は頷いた。続いて住所が聞き出され東京都、〇〇区、〇〇番地と正確に答えた。
警官X,Nは急いで本署に伝えるが、そこには(エンセン)なる人物は存在しなかった。
「あの、エンセンさんですね、それ本名ですか?」
警官Xが聞いた。
不審者は首を横に振った、そして
不審者は震えが止まり意識もはっきりしてきた「三遊家・・・円扇です」。
「円扇さんって、噺家の?」警官Xはハッと気がついた、初めからどこか見覚えがあると思っていた。
そして、一人で二人を演じる噺家特有の喋り方、なぞが解けた。
「あーあの笑転でオオギリしている噺家の、確かにそうだ」警官Nも確認した。
「その円扇サンが、なぜ裸同然でこんな山奥に、何があったんですか、もし良かったら教えてもらってもいいですか?」
「赤い・・悪魔・・・にやられました、奴は人間じゃありませんよ、恐ろしい赤い悪魔ですよ・・・」
警官X、警官Nは再び顔を見合わせた、そして赤い悪魔に心当たりがある警官Xは恐る恐る聞いてみた。
「あのーひょっとして、赤い悪魔というのは座布団運んでいる、ヤマタ君じゃないですか?」
そう言うと、円扇は再び震えながら、
「ヤマタ、・・恐ろしい、ヤマタは赤い悪魔だ、奴は、情け容赦なく私を・・・」
「円扇さん、ヤマタ君が加害者・・・と決まった訳じゃないか」警官Nは被害届が未だ出ていない事に気が付いたので
「あのぅ円扇さん!、裸でいた事情をもう少し詳しく教えていただけますか?」聞いた。
円扇は語り始めた、右を向いたり左をみたりしながら。
「まず、歌〇が・・・あの歌〇がヤマタに私の座布団全部持っていかせて、イヤちょっとからかっただけなんですよ
それを、まぁ真に受けてあの死にぞこないが」
円扇は、病院から出されたお茶を一杯飲むといつもの語り口調になった。
「お巡りさん、まぁ聞いてくださいよっと、座布団ぜ~んぶもってかれてもわたしゃ、痛くも痒くもないですがね、
お客様を楽しませる、ただそれだけですよ、それをあの歌〇とヤマタときたら、全く分かってないバカですよ」
話が脱線しそうなので、警官Nが口を挟む。
「そうですか!円扇さん、分かりましたが、今はこの事件の事情をお聞かせください」
「そう焦らない、焦らない、座布団全部持ってかれてもわたしゃ、怯みません、それが噺家の心意気ってもんでしょう?
だから更に、からかってやると、歌〇の奴が、ヤマタに『お~いヤマタ君、もう座布団ないから番組終わったら、
身ぐるみ剥いで富士の樹海にでも放り投げてくれ』。・・・ってね、まさか本当にする奴いますか?
それを、あの赤い悪魔は・・・」
円扇は一気にまくし立てた。そして警官X、警官Nは頭を抱え込んだ、(どう本署に報告すればいいのだろう?誰も信じてくれないだろうな?)
そこで警官Nは思い切って聞いてみた、もうこれしかない「円扇さん、被害届出されますか?そうじゃないとこちらも行動できませんから」
「いえいえ、・・・実はあのヤマタと歌〇が裏で落語界を牛耳ってまして・・・そんな事したら追放されてしまいます」
二時間後、円扇の弟子が迎えに来てこの件は落着した。
そして警官Nは思わず呟いた。
「落語家なのに、人生から落伍するのが怖かったのか!?」
すかさず警官Nが反応すた「お~いヤマタ君、座布団全部持っていきなさい」
完・・・生死一如
恐怖の「紅い・クマ、。。だ」第1話
星氏に憧れて、書き始めました。
星氏は長身痩躯でスーツが似合うハンサムだったそうで、とても私に無理だと感じました。
そこでショート、ショート、ではなくチュート、チュート(中途、中途)と勝手にジャンルを命名しています。
出来るだけパクリにならないように注意していますが、全作品を完ぺきに記憶している訳でもないので、その折はご容赦ねがいます。