【土方+山崎】ありがとう

しずよ

2018年に開催されましたWEBオンリー鬼に監察さんへ「イベントとても楽しかったです、ありがとうございました」という感謝の気持ちを勝手に表した小話です。作中出てくる掲示板はが〇ち〇んのイメージです。
カップリング要素はないつもりで書いています。

「親子丼ひとつ」
「おれ冷やし中華お願いします」
 土方と山崎が昼食のために定食屋へ来た。注文した直後に土方がタバコを取り出し火をつけようとした。すると「うちは完全禁煙なので外でお願いします」と店員から注意された。
「……一服してくる」
 土方が山崎に言い残し外に出た。店の駐車場わきに設置してある灰皿で、タバコを一本吸う。それから先ほど携帯に届いたメールの確認をして店内へ戻ると、もう注文した品がテーブルにのせられていた。
 土方はマヨネーズを取り出し丼の上に絞る。向かいから「うわあ……」みたいないつもの非難が聞こえないので山崎を見ると、熱心に携帯電話の画面を見ている。
 土方は手を合わせて食べ始めるが、山崎はまだ手を付けない。
「オイ、麺がのびるぞ」
「あー、ええ……ハイ…」
 山崎は空返事をしてまだ画面を見続ける。無視されてるしご飯はそっちのけで行儀が悪い。土方は腹が立ってきた。
「コラ山崎。お前の飯にもマヨネーズ食らわせるぞ」
「スミマセンすぐ食べます!」
 パチンと携帯電話を折りたたみ、懐にしまおうとした。そこをすかさず山崎から携帯を奪う。
「あっ、何するんですか副長! 返して!」
 そして画面を見た土方が怪訝な表情をした。そこに表示されているのは女性向けの掲示板が集まったサイトだった。

―――

【チンピラ警察総合スレッド172】
328.
聞いてください!今日は町内の一斉清掃の日だったのですが、なんと額の真ん中に絆創膏を貼った男性がいたんです。彼は絶対に隈無清蔵さんだったと思います!!

329.
>>328
絆創膏?
あのお釈迦さまみたいなほくろ隠してんのかな?

330.
>>329
横だけどほくろ取れちゃったみたいよ

331.
>>328
隈無さんはお休みの日は清掃活動によく参加してるみたいよ
以前から目撃情報ある
私も4月の海岸清掃に参加したら、隈無さんいたから声かけて写真撮らせてもらった

332.
>>331
めっちゃうらやましい!!!!!

―――

「……なにコレ」
 土方が異様に疲れた表情で、山崎に聞いた。
「いやー、隈無さんさすがですよね。おれ感心しちゃって」
「いや俺も感心したけどさ、そこじゃねえよ。このサイトは一体何だって聞いてんだよ」
 土方が山崎に凶悪な顔をして詰め寄る。
「俺が作ったんじゃないから怒らないでくださいよ。真選組のファンの女性の皆さんが、俺達の仕事振りなんかを書き込んでくれてる掲示板みたいです」
「え、ファンって……」
 悪人顔から一転して土方は呆然とする。
「やだなあ、そんなとぼけないでくださいよ。副長や沖田隊長は身に覚えがあるでしょ。すまいるでもたくさんの女の子に囲まれるじゃないですか」
「あれは仕事だろうが」
「例え仕事であっても、俺はあんな大勢のキャバ嬢からキャーキャー言われたことないです」
「……」
 浮気が見つかって責められてる、みたいな妙な雰囲気になったので、土方は話を逸らした。
「そ、それはそうとお前まさか仕事中にこんなのばっかり見てんじゃねえだろうな」
「そんな訳ないじゃないですか。たまにチェックしてるんですよ。前に事件に関するすごいヒントをくれたことがあって」
「ヒント? そんなのあったのか?」
「ええ、半年前に捕縛した活動家覚えてます?」
「活動家? ああ、あの変な三人組か」
 御城の半蔵門で白昼堂々、幕府に対する抗議デモをする浪士が三名現れたのである。拡声器を使ってがなっていた。
 登城するために通りかかった近藤と土方が職務質問して、その最中に二人に生卵を投げつけ逃げようとしたために公務執行妨害でお縄となった。
「捕縛後にそいつらの過去の活動歴が無いか調査してる時に、この掲示板見つけたんですよ。浪士に関するこんな噂を耳にしたって内容だったんですけど」
「ふーん、それ俺には報告してなかっただろ」
「そうでしたっけ? まあ、それで書き込みの裏を取ったらビンゴだったんです」
「すげーな」
「善良な市民の目は監視カメラに勝るなーって驚きました」
 山崎のはつらつとした表情とは裏腹に、土方は難しい顔をして考え込む。
「確かに良い使い方をすれば、インターネットを活用した捜査は有効だと思う。けど逆に、陽動目的の書き込みもあるかも知れねえ。それに『真選組の誰々さんから聞き込みされました♡』とか捜査情報漏れの可能性がないわけじゃねえ」
「副長の懸念はごもっともです。俺も内容を鵜呑みにしないで必ず裏取りしますし、書き込みに関しては初めに注意書きがあって、捜査に関わる内容や隊士のプライバシーは書き込み禁止になってます」
「へー、そうなんだ。すげーな市民のネットリテラシー。でもさ、それなら清蔵さんはどうなんだよ」
「ああ、確かに。清掃作業は自治体の公的な行事だし、奉仕活動ってことでオッケーなんじゃないですか?」
「基準がいまいち分からねえな」
 土方はサイトをさかのぼって読み始めた。山崎は冷やし中華を黙々と食べる。数分後に土方が口を開いた。
「なあ山崎。このさァ、鬼と監察をまったり観察するスレって何?」
 土方が示したのは先程の真選組に関する総合スレッドとは別のものだった。眉間にシワを寄せて山崎に携帯電話の画面を向ける。
「ああ、それは」
「この鬼ってひょっとして俺のことか?」
「……たぶん」
「で、監察って? 数人いるけど」
「……」
 山崎はほんのり頬を染めてうつむいた。
「いやいやなんでお前が赤くなるんだよ! 俺までなんか恥ずかしいわ!」

―――

【鬼と監察をまったり観察するスレ10】
67.
うちの車は前と後ろにドラレコつけてる
そしたら昨日、たまたま真選組パトカーがうちの後ろ走ってて、バックミラーで運転席見たら山崎さんなの!
そしてなんと助手席が土方さん!!
家に帰って後ろのドラレコ再生してみたら、赤信号で止まってる時の映像がきれいにうつってた
みんな見て!!!!!

68.
>>67
ありがとう保存しました!
土方さんが笑ってるの初めて見たわ!
二人で何の話してるのか気になる〜

―――

 67番の書き込みにはドライブレコーダーの映像がGIFに加工されて貼られていた。それは信号で停車した際のほんの三十秒ほどの映像で、山崎が何事か話ながら助手席を見る。すると土方が呼応して笑っている瞬間をとらえていた。
 客観的にその映像を見ると、確かに二人は仲が良さげに見えた。土方と山崎は妙に気恥ずかしくなった。その気分をごまかすように土方が口を開く。
「ここ赤坂新町あたりだろ?」
「先週、とっつぁんの自宅に行った時のやつですよね」
「つーか観察っていうか監視じゃねえのコレ。プライベートじゃねえけどさ、結構ムズムズするんだけど」と土方が言うので「まあまあ副長、これ見てくださいよ」と山崎は別の頁へ移動させる。

―――

【チンピラ警察総合スレッド19】
525.
先月から私の家の近所で不審火が多くて怖かった。ゴミバケツやバイクが燃やされてる。
見回りを強化してくれと詰所に親が電話したら、もともと同心が少ないからすぐに対応するのは難しい。岡っ引きを増やしているからしばらく待ってほしいと言われた。
がっかりしていたら、翌日バイトから帰る途中で真選組の制服を見つけた。
珍しく髪が長めで怖くない雰囲気の人だったから、思い切って声をかけた。そしたら真選組でも重点的に見回りしますよと言ってくれた。
そのニ日後に放火犯が捕まった。あの時の真選組の人にありがとうと伝えたいです。

―――

「ね、いい話でしょ? 元気出ませんか?」
 山崎が得意満面で土方に同意を求める。
「いい話っつーか、これお前だろ」
 えへへ、と山崎は照れている。
「アンパン生活が続いて精神的に辛くなった時にこれを見つけたんです。そしたら急にやる気が出てきて、こういう人達の暮らしを護るために俺は自分の仕事をがんばらなきゃなーって思いました」
 山崎が自身に満ちた表情で言うから、江戸のみんなを護っているつもりで、俺達もみんなから護られているのかも知れねえな、と土方は思った。
「元気をもらうのは構わねえけど、こういうの利用されてまた毒入り肉じゃがとかもらうなよ」
 土方は携帯電話を折りたたんで、山崎に返した。
「それは重々承知してますよ。それにあれ以来、副長が差し入れ増やしてくれてますもんね」ありがとうございます、と山崎が屈託なく笑う。
 時々こんなふうにしおらしいことを言うから、次の張り込みには何を差し入れようかとつい考えてしまう土方だった。
〈了〉

【土方+山崎】ありがとう

【土方+山崎】ありがとう

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-03-07

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work