狂気明滅
見憶えのない<もの>が
浮かんでは消え 消えては浮かぶ
まるで 明滅しているかのように。
それは そこに静止していることもあれば
ふらふらと飛んでいることもある
死に際の蛍のように、危うげに。
それは 何を意味しているのだろう?
それは私に 何を伝えようとしているのだろう?
それは何の兆候で いまはどの段階なのだろう?
だれも教えてはくれない。
何度も何度も見ているうちに
実像の全貌を掴めそうな気がする けれど
それが 破綻に至らしめる元凶であったなら?
私は 何かをすることができるだろうか?
囮などは買って出よう
そしてその怪異が だれの目にも触れないように努力しよう
たとえそれが 虚しい努力であったとしても。
私の許可なしに私から出ようとする<もの>は
ひとつたりとも逃さない、
私に傷つけられ、そして惨殺されるのは
私ひとりで充分だから。
狂気明滅