雪だより

雪だより

あるところに、ベラというウサギが住んでいました。
ベラは、寂しい部屋に1人で住んでいます。
「そろそろ赤いダウンを出そうかしら…。」
と、ベラが押し入れの中から赤いダウンを引っ張り出していた冬の初めのある日、ベラの部屋に、1通の絵葉書が届きました。
「あら、去年スキー場で出会ったハリーさんからだわ。」
"こちらは、まぶたが痛いほど雪で真っ白になりました。今年は、もしよかったら一緒にスキーで滑りませんか?"
ベラは、すぐに返事を書きましたが、その年はいろいろと忙しくて、スキー場へ行くことができませんでした。

その翌年も、冬の初めのある日、ベラのもとにハリーから絵葉書が届きました。
"今年もまた、まぶたが痛いほど雪で真っ白になりました。去年は一緒に滑れなくて残念でしたね。今年こそ一緒に滑れるといいですね。"
ベラはまた、すぐに返事を書きました。
そして、念願叶ってハリーと一緒にスキーを滑ることができました。

またその翌年も、冬の初めのある日に、ハリーから絵葉書が届きました。
"こちらはまた、まぶたが痛いほどの雪で真っ白です。今年もまた一緒にスキーを滑りませんか?そしてもしよかったら、今年は是非、僕の住む村へも訪ねてきてください。"
ベラは嬉しくなって、すぐに返事を書きました。
"お誘いありがとうございます。いつかきっと、まぶたが痛いほど真っ白なあなたの村へ訪ねてゆきます。"
そしてベラは、約束通り、ハリーの住む村へ、ハリーのもとを訪ねてゆきました。

それからも、冬の初めには必ずハリーからの絵葉書が届くようになり、ベラは毎年、ハリーの住む村を、ハリーのもとを訪ねていくようになりました。
そしていつしかハリーのことが好きになり、ハリーもまた、ベラのことが好きになって、お互いに愛し合う仲になりました。
そして、冬だけでなく、時間がある時はいつでも、お互いの住む村を行き来するようになりましたが、それでもハリーは、冬の初めになると、ベラに絵葉書を送ることを欠かしませんでした。

ベラが冬にハリーのもとを訪ねるようになってから5回目のある日の冬のこと。
2人がハリーの家で楽しく食事をしていたとき、ハリーが言いました。
「ベラ、僕と結婚してください。僕はこの先もベラとずっと一緒にいて、毎年のように一緒にスキーを滑ったりしたいんだ。」
ベラはとても驚きましたが、ベラの答えはもう決まっていました。
「はい、喜んで。」
ハリーはニッコリと微笑んで、ベラに聞きました。
「ベラは僕といて幸せかい?」
ベラはすかさずこう答えました。
「ええ、とっても。だってあなたは、冬ごとに素敵なラブレターをくれるんですもの。」
そして2匹のウサギたちは結婚し、毎年のように一緒にスキーを滑って、幸せな人生を送りましたとさ。

雪だより

雪だより

松任谷由実さんの雪だよりという曲のイメージでドールハウスを作ったことから考えついた作品です。 2匹のウサギたちが織り成す、雪だよりの歌詞と、歌詞のその後の物語。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-03-05

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