起床

あおい はる

 おそくおきた朝の、あの、いつまでも醒めないで、いる、からだの、とくに指の、にぶいうごき。微睡んでいる。星の裂ける音がしたから、おきただけで、まだ、ねむろうと思えば、ねむれた。ふいに、幼い頃、水族館でみたシャチのことを思い出して、かわいかったなぁとか、おおきかったなぁとか、ひどく表面的な、薄っぺらい感想とともに、シャチ、の、からだの流線型の、りんかくを、あたまのなかでなぞる。カフェオレのための牛乳を、きのうは買い忘れてしまって、すこしだけ、今朝は、このままねむっていたいという感じで、でも、カーテンのすきまからさしこむ朝陽が、いまいましいくらいに、まぶしいのだ。指をまげる。かく、かく、と、骨なのか、筋なのか、関節のせいか、なんだか、つっぱっている感覚が、ちょっときもちわるいけれど、しだいに、うごきはしなやかに、違和感はきえる。いつのまにか、星は、大気圏から、きまぐれに裂けるようになってしまって、人的被害はないと、テレビのなかでえらいひとたちは語っているけれど、空の裂け目からわずかに、宇宙、というものが覗けるのは、神秘的であるし、こわくもある。真夜中のスクランブル交差点で、ときどき行われているという、星が裂けないことを祈る儀式ってやつは、所詮、名ばかりの自己満足なのだと、商店街の寫眞屋さんのひとが云っていた。よく、みんな、ねむくないなぁと思いながら、ぼくは掛け布団を、えいや、と蹴り上げた。

起床

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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CC BY-NC-ND
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