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誕生
笑って知った擽り
泣いて失った言葉
拗ねて籠った温度
割れた菓子の色々
投げたボール返る、
暴れた部屋と手足
られた育ちと認識
並べて覚える積木。
正しく発するぼく
溜めたプールの表
脱いだ服と裏返し、
浮かべ水面を往く。
育った船旗を振り、
包んだ風の塗り絵。
掲げて、呼んでと、
赤と白。
空に夏。
古今
「ぼく」、
と呼ばれ振り返り
「ぼく」、
と呼ばれお尻つけ
はい、と果たして
答えたのだろうか。
古びた記録の幼心は、
ひとり、わたしの目。
抱く手足の金属感に
ざらつく顔の作りは
きしむ木目の惑星と
差したオイルの海原、
ひとがたが泳げずに
座るばかりの砂の星。
見上げる月の三個の、
子。
卵を抱えて身を守り
島に植えた命の木は
実になる声を手渡し
戻らない類を思い、
限りを尽くし掬った。
吹きとおる風を拐った。
不吉を淡く照らして
錆びた体に反射して
降りる月夜のあなは、
優しい生き物なり。
古い言い回しの音を聴き、
返す返すの耳たぶが揺れ
ひとであったのだと私、
忘れずに焦がした機会に、
舌を動かした心積もりが
香り。
はな、ということばだけ
これほどこころうつのか。
たどたどしくもれるこえは
みれば、みなもそう。
かたまりとなったこのもじ
しずんだすなとみわけられず、
かじられてはしる、いたみ。
ひのほしにない、かがやき。
かつていたのとわたしたちは
なくしたはなのしたをこすり。
はなのしたをなくし。
したをなくし。
なくし。
なく。
なけた。
そう喜び。
思い出す。
野鼠。
着いた眠りの夢心地は
床に預けて泳ぐ手と
蹴れない宙の暗闇に
星を見つけて寝転がり
仰向けば青を象る丸星。
見つけて交わす通信。
「あおい」いう色、
「えんじ」いう声、
触れられる腹の方。
うつつ残して去る、
尾のあった頃の話。
わたくし、と飜る
愛を尽くしたの頃。
金具を回す本の棚の、
聞いた絵本の
数頁。
閉じた暗がりの瞼裏に
掛かる毛布の重みがあった。
暖かい時間と、軋む機械で
開いた船の扉が厚かった。
覗く向こうの赤い砂漠に
座るひとがた、
見上げるひとがた、
重み忘れたステップで
見つけた私の端の名を
つまむ指の繊細さ。
オートマチックに開始する
今を偏差で記録する。
滲む全ての黒の線に、
加えた炭の文字。
新たになった存在に、
何も忘れられないひとがた。
その一つになった。
未来のM。
折って遊ぶ。
引っ張る力、
覚める口から
寝返って見えた顔。
ターンアラウンド
短く唄う。
最も、と。
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