白蛇、と女の子

薄暗い道に銀髪の、小さな女の子がいた。
白いワンピースを花のように纏い、軽やかに舞う。
海の、潮剤が遠くから近づいてくる。
ざわざわ、ざわざわ。
波が、足元を浸し、空が夜へと落ち続ける。

囁く。
ざわざわ、ざわざわ。
ぽつり、ぽつり、と雨のように澄んだ声で贖罪を歌う。

世界はこんなにも美しい晴れ間だったんだ。

なら、どうしてこんなに暗かったの?私ね、寂しかったよ。神様に何遍もお祈りした。泣いた夜だっていっぱいあるよ?

そう云うと、くるり、くるり泥水を踏んで踊った。

瞬間、風はあたり一面に吹き遊び、すべて一枚の絵画のように黄金の穂を淡く揺らしている。

愉しげな、あなたは罪人のように、詩人のように、奴隷のように、神様のように。

滴る、水滴を幾度も拭った頬が、
ちろちろ、炎のように舌を出す私の熱病を自覚させた。

私は這うように近づく
毒液を腺から滴らせるように、何故なら、その少女を優しく労りたかった。
私の、涙をあなたに贈るのよ

あなたが、憎いから。
私も、生きてゆくのに弱くなってしまったから、
だから、そう口をひらけば、
墨が、白紙に溢れて広がるような笑顔で、優しく指を差し出して。
ああ、もう止まれるはずなんてもはやなくて。
そのまま私はかぷり、と噛み付いた。

白蛇、と女の子

白蛇、と女の子

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-02-28

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