白蛇、と女の子
薄暗い道に銀髪の、小さな女の子がいた。
白いワンピースを花のように纏い、軽やかに舞う。
海の、潮剤が遠くから近づいてくる。
ざわざわ、ざわざわ。
波が、足元を浸し、空が夜へと落ち続ける。
囁く。
ざわざわ、ざわざわ。
ぽつり、ぽつり、と雨のように澄んだ声で贖罪を歌う。
世界はこんなにも美しい晴れ間だったんだ。
なら、どうしてこんなに暗かったの?私ね、寂しかったよ。神様に何遍もお祈りした。泣いた夜だっていっぱいあるよ?
そう云うと、くるり、くるり泥水を踏んで踊った。
瞬間、風はあたり一面に吹き遊び、すべて一枚の絵画のように黄金の穂を淡く揺らしている。
愉しげな、あなたは罪人のように、詩人のように、奴隷のように、神様のように。
滴る、水滴を幾度も拭った頬が、
ちろちろ、炎のように舌を出す私の熱病を自覚させた。
私は這うように近づく
毒液を腺から滴らせるように、何故なら、その少女を優しく労りたかった。
私の、涙をあなたに贈るのよ
あなたが、憎いから。
私も、生きてゆくのに弱くなってしまったから、
だから、そう口をひらけば、
墨が、白紙に溢れて広がるような笑顔で、優しく指を差し出して。
ああ、もう止まれるはずなんてもはやなくて。
そのまま私はかぷり、と噛み付いた。
白蛇、と女の子