幼なじみの

加月ゆずみち

「たったひとつ欲しいものがあるの」
 キミは俺にそう切り出した。
 俺とキミの間にあるのは、幼なじみの縁だ。
 気楽さと好意であって、決して恋愛なんてない。
 だからこそ、キミは俺を信頼して、話してくれるんだよね。
「欲しいものって?」
「彼氏」
「……率直だね」
 それしか言えない。
「私ね、俊也先輩の彼女になりたい! だから告白しようと思うの」
 知っているよ。キミが彼を見ていること。
 あっちもキミに好意を抱いてるのも知ってる。
「ダメかな? 初めからムリだと思う?」
 不安に揺れる瞳。いつも明るく笑うキミなのに、そんな瞳を向けないでくれ。
 俺は少しだけ突き放したくなって、
「しなきゃ、答えなんてわからないさ」
 気の利いたことを言えなかった。
 だけど、キミはなぜか緊張と不安が消えたように笑って、
「そうだね、ありがと。がんばって告白するよ」
 まるで俺の言葉に勇気づけられたように言った。
「ああ、まあ……期待してるよ」
「ふふ。ダメでも報告するよ」
 そうして立ち上がって、颯爽と帰るキミに、俺の想いを伝える術はなかった。

幼なじみの

お題元
「たったひとつ欲しいものがあるの」で始まり、
「想いを伝える術はなかった」で終わる物語を書いて欲しいです。
#書き出しと終わり #shindanmaker
https://shindanmaker.com/801664

幼なじみの

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-02-23

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