反抗期

 こけたバイクの車輪は回っていた 頭が割れて痛かった
 友人が顔面から血を流しながら笑った
 「あそこのおでんには螻蛄が入ってるんだよ」
 夜空に死にかけのゴミ袋が降っていた

 母が見ていたアダルトビデオを燃やした
 先生が持っていた色鉛筆を燃やした
 近所の犬の犬小屋を燃やした
 自分の靴を燃やそうとして、惜しくなってやめた
 火が燃え移った家は平然と乾いていた

 三角定規を尖らせることに熱中していたら、鼻糞になったよ

 夜空に死にかけのゴミ袋が降っていた
 こけたバイクの車輪は回っていた 頭が割れて痛かった
 友人が脇腹から血を流しながら笑った
 「あの角にいた紺の狢はもういないんだよ」
 頭が痛かった おれも笑った
 「螻蛄って意外と旨いんだよ」
 こけたバイクの車輪は回っていた

反抗期

反抗期

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-02-21

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