エーデルワイス

埃をかぶったアルバムを開くように
私の中にある思い出を取り出す
そこにいるのは私とあなた

だけど顔はよく見えない
まるでその部分だけ切り取られた写真のように
私の顔だけが写っていない
あなたと過ごした時間

私はどんな顔をしていたんだろうか

何度も何度も記憶をなぞった

あなたの方から告白してきてくれたわね
私にとってもあなたにとっても
初めての告白

私はどんな顔をしていたんだろうか

何度も何度も記憶をなぞった

他の子よりも小さな娘が生まれた
顔は私似だけど目だけはあなたに似ていたわね
私とあなたの大切な宝物

私はどんな顔をしていたんだろうか

何度も何度も記憶をなぞった

持病が悪化して寝たきりになったあなた
娘の前では元気にふるまっていたわね
長い間病気と戦い続けたあなた

私はどんな顔をしていたんだろうか

何度も何度も記憶をなぞった

何度も何度も

あなたのお墓にエーデルワイスをお供えに行った

あなたが大好きだったエーデルワイスの花を

今はもうお供えに行くことすら出来ない

音が遠のいていく

視界が暗くなる

私の番が来たみたい

ふとあなたの声が聞こえてきた

思い出せたかい

ええ思い出したわ

あなたとどんな顔で過ごしてきたのかーーー


「おばあちゃん笑顔だね」
「ゆっくり休んでね、おばあちゃん」
「今までありがとうね、おばあちゃん」


エーデルワイスが静かに揺れた

エーデルワイス

エーデルワイス

花言葉は「大切な思い出」。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-02-20

Copyrighted
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