真野と目戸

柊おかゆ

  1. ギブアンドテイクから始まった、僕と彼の、秘密の関係。
  2. 2

ギブアンドテイクから始まった、僕と彼の、秘密の関係。

真野 砅
身長:176cm
部活:帰宅部

目戸 碧
身長:185cm
部活:美術部


高校性になった。
ただ「周りの人間が進学を選択しているから」という理由で進学した。そう選択するのが一般的だと思ったから。
この男子校を選んだのも「嫌いなプールが無い」「電車通学に憧れがあったから」というだけのもの。他人事のように言うが、何とまあ安易な考えなんだろう。

入学式当日、友人とクラスが離れた。
新しい環境に慣れるまで時間がかかる僕は、既に憂鬱な気持ちが心の中を支配していた。
指定された教室に足を踏み入れて周りを見てみると、まあ個性的というかクセが強そうだなという印象を持たざるを得ない人間がわんさかいて、仲良くなれそうな人間は既にグループを作って固まっていた。
更に憂鬱な気持ちが加速した僕は、このまま家に帰って部屋に籠ってゲームしたいな…と早々と挫折しそうな気持ちを抱きつつも、無事何事もなく入学式を終え、教室へ戻り席に着く。
しばらくして担任であろう人間が教室へ入ってきて、高校生になって初めてのホームルームが始まった。
最初は担任の自己紹介。
「このクラスの担任になった田中です。これから宜しく」
にこりともせず淡々と話を進める。
神経質そうな人だなあ、と失礼なことを思いつつ右から左へ聞き流す。
そしてお決まりの質問タイム。
「恋人はいるんですか~?」
「いません」
「先生の担当科目は何ですか~?」
「科学です」
誰得だよ、という質問が飛び交い、律儀に答える担任にわあわあと盛り上がる教室。真面目か。

そして、きてほしくなかった地獄の時間が始まる。このまま担任いじりが続いてなかったことになれと念じつつも、無慈悲にその時はやってきた。
そう、生徒の自己紹介タイムだ。

自己紹介が死ぬほど苦手な僕は(当たり障りのないことを言ってさっさと終わらせてしまおう)という気持ちが心の中が占めていた。
(出来るだけみんな沢山喋って時間稼ぎしてくれ…あわよくばそのままこの自己紹介タイムよ終われ…)
念じながら、いずれ来る自分のターンに怯えていた。
そして遂にそのときが来てしまった。
「…真野砅(まのれい)です。趣味は読書です。宜しくお願いします」
当たり障りない在り来たりな自己紹介を終えられたことによる安堵と若干の興奮。
人に注目されたり、静かな空間に自分の声が響くのが苦手な僕は、さっきからバクバクと煩く音のなる心臓を治めつつ、それらを表情には出さずに椅子へと腰を下ろした。
他人に興味がないです、という顔で適当にこれからクラスメイトになる人間たちの自己紹介という名の己のアピールタイムを聞き流していた。その時だった。
目戸碧(めどみどり)です」
ある意味、一目惚れみたいなものだったと思う。
今まで灰色だった視界が一気に色づいた。
声、雰囲気、表情。全てに惹かれ、興味の対象になった。
僕は積極的な人間ではない。だから、声をかける勇気なぞ持ち合わせていなかった。
そんなわけで、何もアクションを起こせないまま今日を終えた。

高校生になって、初めての授業が始まる。
英語の授業は小テストで勝手が分からず、赤点を取ってしまった。かなりショックだ。
赤点を取ってしまった人間の名前が呼ばれて「放課後に補習をするから指定の教室まで来るように」と言われた。
まだ何処にどの教室があるのか把握出来ていない僕がひとりで教室に辿り着くのは困難だろう。絶対にオロオロして終わる。
(どうしよう…そういえば目戸くんの名前も呼ばれてたな…声、かけてみようかな。急に声かけて何こいつみたいな顔されたら立ち直れるかな…ええい!当たって砕けろだ!)
勇気を出して彼に話しかけることにした。
「あの、目戸くんも補習だよね?」
「そうだけど、どうかした?」
「僕まだ教室把握出来てなくて場所分からないから、もし目戸くんさえ良ければ一緒に行ってもいいかな…?」
「いいよ。一緒に行こうか」
「ありがとう、お願いします…!」
これが、僕と目戸碧との初めての会話だった。

あれから僕は彼と過ごす機会が増えた。
そうしたら目戸の周りの人間たちとも話す機会が増え、自然とクラス内に友達も出来たり、いつの間にか、彼は僕の隣にいることが当たり前になってきて、昼食を共にするまでの仲になっていた。
僕が無意識に隣を陣取っているのか、彼が好んで隣にいてくれているのかは定かではないが。
それからは、放課後にカフェに行って、色んなことを沢山語り合ったり、共通の友達と遊ぶことが増えた。
此処で友達を作る気は無かったし、むしろ要らないとさえ思っていた。表面を取り繕って友達ごっこをするのが面倒で億劫だったから。
僕は、絵に描いたような真面目だ。所謂「陰キャ」というやつ。
ただ、彼はクラス内のヤンキーたちに目を付けられるくらい目立つ存在だった。
授業中にイヤホンを制服に仕込み、袖から見えないようにして音楽を聴いていたり。
あるときには、カンニングペーパーを作ってテストを受けていたりした。
僕としては、カンニングペーパーを仕込む時間があったらその時間で勉強出来るのでは?と思ったりもしたが、本人曰くそういうことではないらしい。
他のクラスメイトもちらほらやっていたから、僕が馬鹿が付くほど真面目すぎるのだろう。
そんな問題児の彼と真面目な僕が、どうして仲良くなれたのか自分でも分からない。

彼が隣にいるのが当たり前になってきた頃。
体育の授業が終わって、制服に着替えている最中に言われた言葉が、今も強く記憶に残っている。
「真野は友達要らないって言ってたけど、友達いないとグループ作るときに浮いたりして不便じゃん。だからギブアンドテイクで友達って関係になってみない?」
「ギブアンドテイク…?」
「そう。早い話、お互い都合のいい関係になりませんか?ってこと」
「それ、目戸くんにメリットあるの?」
「あるある、大あり。一緒に昼飯食ったり、教室移動したり、体育の授業で二人一組作ることになったときとかさ。色々あるじゃん」
「まあ、確かに…」

真野と目戸

真野と目戸

一目惚れみたいなものだったと思う。 「目戸くんってxxと付き合ってる?」 「でもお前はxxを好きにならないだろ」 ふたりの青年が織り成す青春の物語。 不定期更新

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-02-15

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted