「素敵な片思い」


 「ずっと一緒だよ」小さい頃彼女は僕にそう言った。ずっとや永遠なんてものはない、それくらい僕にだって分かる。でも彼女が僕を選んでくれたことが嬉しかった。僕達は一緒に砂場で遊んだし、滑り台も滑った。夏になれば海へ行ったし、冬は一緒にこたつで暖まった。ずっと一緒に居られると少し期待したけれど、彼女は大きくなるにつれてだんだんと素っ気ない態度を取るようになった。挙句の果てには僕の知らないやつと手なんか繋いじゃって。
 彼女と関わらなくなって数年経っても僕は彼女のことが忘れられなかった。毎日彼女のことを考えた。でももう、僕を見向きもしない。ただ時間だけが過ぎていく。そんなある日、彼女が泣いているのを見てしまった。僕は見ないようにしたけれど彼女は僕を見つけるなり昔を懐かしむような顔で僕に抱きついてきた。なんだよそれ、都合が良すぎるだろ。でも彼女があんまりにも強く僕を抱きしめるもんだから思わず抱き締め返してしまう。僕って結構単純。
 ああきっと僕はいつまでも彼女が好きなんだろう。おもちゃ屋の片隅で座っていた僕を見つけてくれたその日から。

 
 
 

「素敵な片思い」

小さい頃大切にしていたメルちゃんの人形が出てきました。懐かしい。

「素敵な片思い」

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-02-14

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