神の手を持つ男

妄想外科医が、いつの間にか本物の外科医になった。
2025年医療と科学は、発展していた。
もちろん 日本がその最先端にいる。
諸外国は、自国の開発を止め すべてを日本に頼っていた。
日本の平和主義と日本人の「和」の心が、すべての国から信頼を得て
この分野で独占することに他国は、何の心配もしなかった。

こんな俺が、名医に変身できたのも この背景がある。
すべての医療行為は、医療ロボットが行う時代になったからだ。
オペもロボットが行うのだ。
人間が行うことは?と言うと ロボットに倫理的指令を出すかどうかだ。
日本人は、産まれるとすぐに医療チップを体内に埋められる。
このチップのデータをもとにすべての医療が行われる。
正確で精細なデータは、完璧な医療につながる。
オペの成功率は、100%である。(成功しないオペは、回避できる)

俺達 外科医は、倫理的に人間的に この医療行為が正しいかを判断して 
開始認証を行うのが仕事になった。
つまり 医学知識も技能も経験も不要なのだ。
2020年 全国民倫理感試験が行われた。
この結果により、新外科医候補が選別された。
その候補のひとりが 俺だったということだ。

今日も 俺は、マスクをしてオペ室に向かう。
マスク美人のナースが待っていた。
妄想が始まった・・・・・。
なにがなんでも 命の継承をしようとする男の本能が
命の大切さと誤解しているから もう外科医は、辞められない。
「先生の手って 本当に神の手ですね・・・。」と
ナースが潤んだ目をして言った。

神の手を持つ男

神の手を持つ男

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-23

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