捌け口

あおい はる

 縫い目から、あふれるのが、綿ではなく、無償のやさしさであってほしい。祈りはいつも、宙ぶらりんで、おわる。夜と、朝のあいだの、わずかの時間だけでもいいから、逢いたいひとがいて、そのひとが、もし、ぼくのことを、ぐちゃぐちゃにしたいと言えば、ぼくは、いいよ、と答える。どうぞ、まんぞくするまで、ぐちゃぐちゃにしてください。からだ。こころも。
 求められることは、愛されることと、イコールではない。しっている。
 愛と、性が、点と点でつながらないのと、おなじだ。肉欲と、愛情が、交わらないとき、けれど、それは、ときに清々しくもある。あのひとが、夜のおわりとともに、ぼくを、夜のなかに閉じこめるみたいに、いっそ、はげしくかきまわして、朝なんて来ないのだと、突きつけてほしい。ぼくから、あのひとへのそれは、愛で、あのひとから、ぼくへのそれは、刹那の衝動だったとしても。
 たばこを吸う、という行為をやめた。冬。澄み切った空気の、痛みをあたえてくる冷たさの、かききえた眠気を恋しく思いながら見つめる、街灯。

捌け口

捌け口

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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CC BY-NC-ND
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