【二次創作】古書屋敷殺人事件
はじめまして。銀丞という者です。
【注意事項】
*この作品はボカロの二次創作です
*オリキャラ出てきます。
*自己解釈です。
*駄文です。推理小説なんて無理です。
それでも大丈夫な方はどうぞ。
序章
「はぁっ…はぁっ…」
神田、神保町。
「なっ…なんで…」
町を駆ける一人の少女が一人いた。
「なんで…なんでこんな事になるのよぉぉぉぉっっ!」
***
私は、小さい頃から本が大好きだった。
父親は物心ついた時はもういなかった。母親はいつも仕事で夜遅く迄働いていた。
親代わりだった母親の弟、つまり叔父のもとで育った。
その叔父はセドリ師で、頭も良く、私の憧れの人だった。
しかし、病弱で足が悪く、歩けない為移動は木製の車椅子に乗っていた。
そして十年前、私の師でもある叔父は、当時発生中の連続殺人事件に巻き込まれ、亡くなった。
あれから十年、私は二度と悲しい事件を起こさない為、探偵になった。
……はずなんですが!!!!
私が今、何してるか分かります?
ある人の自宅から往復四十分もする古書店に分厚い八冊の本を持って走ってるんですよ!?
しかもその古書店、本の数多すぎだから本を探すの時間かかるし!
なのに一時間以内で帰ってこいとか!人使い荒過ぎ!
「…つっ…着いた…!」
よく頑張った、私!
話は約二十分前に遡る。
「先生!久堂先生!いつまで寝てるんですか!」
「………」
反応無し。
私は今、セドリ師(駆け出し)&探偵見習い&久堂先生の助手という職業まみれの生活を送っている。
最後の助手っていらないと思うんだけど…
先生は推理小説作家だから、私は先生に色々教えてもらう代わりに、助手をやる、といった感じだ。割合は2:8位だと思うけど…
「先生!いい加減にしてください!」
「…ひばり君。君はそんな事が云える立場かね?」
ソファの上で死んだ様に寝ていた先生が、顔に乗せていた本を手に取り、私を見た。
さては狸寝入りかましてたな。
「……どういう事ですか?」
先生はソファに座り直し、私に向かって云った。
「君は私の助手であり、私に推理の伊呂波を教えろと云った。君が不利な方だという事を考えたまえ」
「なーにが不利な方、ですか。勝手に先生が不利な方にしたんでしょ!」
「それを承諾したのはどこの誰かね?」
こ、この人は……
「へっ…屁理屈ですよ!屁理屈!」
「何を云うか。これは理屈と云うのだよ」
とんでもなく頭がキレて、とんでもなく意地悪だ!
「…そんな事云って。後で痛い目にあいますよ。」
「君の云う痛い目は痛くない。どうせまた君がひねくれて出ていくのが見えている」
「ひねくれているのはどっちですか」
「私ではないな」
充分ひねくれてますよ…
駄目だ、この人には勝てない。
「潔く負けを認めた様だな」
先生はそんな私を面白いものでも見てるように笑っている。
悔しい…!
「そんな訳で助手のひばり君。君に仕事を頼みたい。」
「あ、私留守頼まれてて…」
「ほざけ。逃げようとしても無駄だ」
「嫌です!先生、人使い荒すぎなんですもん!」
「他人を巻き込むようなどっかの誰かよりはマシだとは思うがな」
「うっ…」
「そこに積んである本をいつもの古書店で売ってこい。売って得た金でこれに書いてある本買って来てくれ。一時間以内で帰ってこなければ夕飯は無しだ」
そう云って先生は光速でたった十秒で書いた買ってくる本のメモを私に叩きつけた。
「そっそんなぁ…」
「残り五十九分五十九秒」
「えぇぇえぇっ!もう始まってるんですかっっ!?」
「当たり前だ」
「うわぁぁぁあぁぁんっ!先生なんて知らないっっ!!!(泣」
回想、終了。
その事を古書店の店長さんに話したら、笑われた。
「わ、笑い事じゃないですよ、雪次郎さん!」
雪次郎さんはどこにでもいそうな優男さんだ。
「そんなに大変なら、断ればいいじゃないんですか?」
「駄目です!今日は絶っっ対に断れないんです!」
「え?」
「今日の晩御飯、落花生と野菜の醤油炒めなんです!絶対断れません!」
「夕飯目当てなんだ…」
「それに私は不利な方だから…ってもうあと二十分ーっ!?」
「往復四十分じゃないのかい?」
「走って往復四十分です!探すの手伝ってくれてありがとうございました!じゃ!」
私は頼まれた本十冊持って走って帰った。
「……元気だなぁ…」
「たっ…只今戻りました…!」
「一分遅刻」
「う、嘘!いやぁぁあっ!じゃあ、晩御飯抜き!?」
「ここにある本全て片付けるなら、夕飯を作る」
「かっ片付けます!」
「ちゃんと元の位置に戻すのだぞ」
「はいっ!……ところで、これ、全部で何冊あるんですか?」
「…百。」
「…はい?」
「だから、百冊だと云っているだろう」
「…どんだけ出してるんですかぁぁぁあぁぁっ!(泣」
「阿破破!」
この時はまだ知らなかった。
これから起こる事件を…
第1章
「はぁ……」
昨日の疲れが溜まりに溜まって、私は溜め息をついた。
「溜め息つく暇があるのなら新聞を取ってきてくれないかね」
そんな時にも助手の仕事は転がりこんでくる訳で。
「うげ……」
「何がうげ、だ。」
「…先生、本当、鬼ですね…」
「どこがだね?」
「はぁ……」
本日二度目の溜め息をかまし、新聞を取りに玄関に向かう。
「……あれ?」
私は玄関の戸の前の影に気づき、戸を開ける。
「霧島さん…!?」
霧島さん…本名は霧島聖さんなのだが、まだ二十歳の新人若手推理小説作家なのだ。
まあ、先輩にあたる推理小説作家の久堂先生に憧れる青年って所かな。
容姿はまだ17、8歳位に見えるけど…
「ひばりさん!ご無沙汰してます!」
「どうしたんですか?久堂先生に何か用事が…」
「いいえ!用事があるのはひばりさんにです」
「え?」
「ひ、ひばりさん…俺……実は、ひばりさんの事、す」
そこまで云った霧島さんの額に、何かが飛んできて、刺さり、流血。
霧島さんは倒れた。
「すまない、手が滑った。」
久堂先生が私の後ろにいた。
「私は新聞を取ってこいと云ったのだ。そこに倒れている暇人と喋ってこいとは一言も云ってはいないはずだが?」
先生のこめかみに青筋が浮き出る。
相当お怒りのご様子。
「何するんスか久堂先生!この万年筆お持ち帰りしていいッスか!?」
額に万年筆刺さったまま起き上がる霧島さん。
霧島さんは知らない。久堂先生のお怒り度がMAXを既に超えている事を。
「あの…先生?ちょ…」
「……帰れ!」
引き戸を思いっきり閉め、霧島さんは強制退場。
今の先生、寝起きだから機嫌悪いんだよなぁ…
ごめんなさい、霧島さん。話全然聞いてなかったから、また今度聞くね。
そんな事思ってたら、黒電話がなった。
「……はい」
久堂先生が不機嫌のまま電話に出る。
そうしたら、久堂先生が一層不機嫌な顔になった。
****
「五十嵐邸。この町では『古書屋敷』と呼ばれ、知らない者はいない。」
私達は、古書屋敷に来ていた。
先程の電話の内容を久堂先生に聞いてみると、
『あの…先生、電話、どんな内容で…』
『出るぞ』
『えっ?出かけるんですか?どこにですか?』
『五十嵐邸だ』
『あの、古書屋敷に!?』
『あの猿(霧島)の原稿取りにな…』
第2章
「やあ、久堂君に助手のお嬢さん。会うのは何週間ぶりかな」
「ご無沙汰してます、五十嵐吾郎先生。」
先生が私には滅多に見せない無敵の笑顔を向けたのは、いかにもお金持ちそうな狸みたいな中年の男性。
この人こそ、『古書屋敷』基五十嵐邸の主人、五十嵐吾郎先生だ。
五十嵐先生は幅広いジャンルの小説を書いている大人気作家だ。
久堂先生の先輩みたいな人で、久堂先生の家の本棚にも五十嵐先生の著書は十冊以上ある。
「儂の選んだ優秀な婿養子のはずだが…迷惑をかけた様だな」
五十嵐先生が私達二人の後ろで俯いて青ざめている霧島さんを見て冷や汗をかく。
「全くですよ」
久堂先生は笑顔で答える。
この人、本当に怖い人だよなぁ……
私も冷や汗をかきそうになる。
「まあ、いい。こんな所にいても寒いだろう。入りなさい」
「お邪魔させて頂きます」
久堂先生は(多分先生の中では最上級の)敬語を使い、小さく礼をすると、コートを脱ぎ、いつもの格好になって玄関に入った。
「お…お邪魔させて頂きます」
私も久堂先生の真似(でも私コート着てないからその辺は抜きにして)をしたら五十嵐先生は笑顔で迎えてくれた。
****
長い廊下を三人で進んでいたら、久堂先生が私に小さく話しかけた。
「…ひばり君。この屋敷…何か変だと思わないかね?」
「…はい。なんたってこの屋敷……蓄音機が置いてあります!」
私がそう言ったら、久堂先生がまたいつもの様に「君は馬鹿かね?」とか言いそうな顔で私を見てきた。
「…えっ、だって…私、蓄音機なんて見るの初めてなんですよ?そのくらい高価だから、先生も初めて見たから変だって……」
「…どこが変だ!君は私の事を馬鹿にしているのかね?」
「違います!私は……いたっ!」
必死に弁解しようとしたら、また拳を作った手の甲で小さく殴られた。
「君は私を馬鹿にしている様だな……蓄音機位見た事あるのだよ、ドアホ」
因みに云っておきますが、私が久堂先生にドアホと云われたのも人生で今日が初めてです。
そんなやりとりをして五十嵐先生に大爆笑され恥をかいていたら、いつの間にか客間に着いた。
「ここが客間だ。入りなさい」
そう云って五十嵐先生が下部が綺麗に彩られた襖の右を開けてくれた。
そこには、殺風景だが、どことなく豪華さが感じられるような客間が目の前にあった。
白黒で模様付けられた絨毯。客間の真ん中には、黒い長方形の小さなテーブル、それを囲むのは一人用と二人用がそれぞれ2つずつある赤いソファ。
「せっ…先生の家にある黒いソファより大きい…!」
「さっきからなんだね?君は。私の事を馬鹿にしているとしか思えないが」
ふん、昨日と朝のお返しですよ。
「……まあ、君の考えている事など、まるわかりだがな」
「な…なんの事ですか?」
「…いや、云わないでおこう」
またいつもの様に、久堂先生は意地悪そうに微笑んだ。
「遠慮はいらない。座りなさい」
五十嵐先生に促され、二人用のソファに久堂先生と一緒に座る。
ただし、間を置いて。
「…なんだね」
先生がソファの手を置く所に肘をついて困った様に云う。
「知りません。私だって年頃の女の子なんです。」
私はそっぽを向いて、久堂先生を見ずに云った。
「……」
ん?なんだろう、私の方が有利なはずなのに…なんだろ、この胸騒ぎ……
「…ふん、昔は恥も知らずに『ひばり、大きくなったら先生のお嫁さんになる!』とか人前でも云っていたのに、年頃というのは全く、面白くないな」
「いやーっ!そ、それ、いつの話ですかぁぁぁっ!?」
「確か……十年前位じゃないか?」
「なんで覚えてるんですかぁぁぁ!」
久堂先生の記憶力が半端ないという衝撃的な事実。
「はっはっは!愉快だな、君達は。」
そんなやりとりしてたら、また五十嵐先生が大笑いした。
「うるさくて申し訳ない」
「いいんだ、久し振りに面白いものを見せてもらったよ」
五十嵐先生のおかげで、丸くおさまってくれた。
良かった……これ以上私が不利な事云われたら、困るもん。
「失礼します」
襖の向こうから、女の人の声がした。
右の襖が開き、綺麗な女の人が入ってくる。
ウェーブのかかった柔らかそうなロングヘアを胸迄伸ばし、二の腕の部分が膨らんだ袖のついた白いブラウス、淡い赤色のロングスカート。胸の上の襟の真ん中には、赤い小さめのブローチ。
同じ女の私でも、思わず見とれてしまう。
「葵彌(アオビ)か。」
五十嵐先生がその女の人の名前を呼ぶ。
「はい。お父様、お茶をお持ちしました」
そう云って私達三人の前にそれぞれ、お茶を置いてくれた。
「……あれ、いつの間に霧島さん、どこ行ったんでしょう?」
私は今更ながら、霧島さんの存在が無いことに気づき、久堂先生に質問してみる。
「原稿を取りに自分の部屋に行ったのだろう」
出してくれたお茶を飲みながら、久堂先生が答えてくれた。
「…ちゃんと原稿、完成してるのかな……」
「それは大丈夫だよ、お嬢さん」
私の呟きに五十嵐先生が答えてくれた。
「ああ見えて聖君は結構真面目でな。締め切り三日前には、もう原稿を完成させているよ」
「そうなんですか……」
ちょっと意外。
「失礼します、お父様」
また、襖の向こうから女の人の声がした。
すぐに右の襖が開き、今度は二人の女の人が入ってきた。
一人の女の人は真っ白な肌で、髪型が日本人形みたいな、大和撫子みたいなさらさらそうな髪。首が隠れる黒い薄めのセーターに、白いロングスカート。この人は金色のペンダントを首からかけている。
もう一人の女の人は、どっちかというと女の子って感じで、私と同じ位の女の子。きっちり揃えられたおかっぱ頭に、着ているものはグレーの二の腕が膨らんだ袖のセーラー服。このセーラー服、私の記憶では確かここいらでは有名なお金持ちの通う女学校の制服だったような…
「娘の紹介がまだだったな。こっちが長女の葵彌。」
先程、私達にお茶を持ってきてくれた女の人が、小さく礼をする。
「今入ってきたのが次女の凪(ナギ)。」
「凪と申します」
鈴の鳴るような綺麗な声で、大和撫子のような女の人が微笑む。
「で、あちらが三女の那智流(ナチル)だ」
五十嵐先生がセーラー服の女の子を指す。女の子は、喋らずにニコッと、笑顔で私達を見る。
「三人共、こっちが小説家の久堂君、そちらのおさげの女の子が助手のひばりさんだ」
五十嵐先生が私達を紹介して、私達は小さく礼をした。
「貴方が久堂先生ですか。私、いつも著書を拝見させてもらっているんですの」
次女の凪さんが、微笑みながら云う。
「それはどうも。読者に会えるなんて光栄です」
久堂先生は無敵の笑顔で凪さんに答える。
凪さんが久堂先生に握手を求めたが、先生は遠慮した。
「あ、お姉様、私が片付けます。」
長女の葵彌さんが私達のお茶を片付けようとしていた事に気づき、麗さんが云う。
「…でも…」
「いいのよ、お姉様。休んでいて。さっきから働きすぎよ」
「……ありがとう、凪。」
葵彌さんが凪さんに微笑むと、凪さんも微笑み返す。
「……那智流、貴女も手伝ってくれる?」
凪さんが客間を出ようとすると、三女の那智流さんもついていき、右の襖を開けてきたを二人で出た。
「……儂の妻、つまりこの三姉妹の母親なんだが、既に他界していてね、使用人も一人しかいないから、いつもはこの三姉妹が家事をこなしてくれるんだよ。特に、一番上の葵彌がね」
ああ、だからこんな静かなんだ……
「……ところで久堂先生。霧島さん、遅くないですか?」
「……。」
久堂先生は無言で、何かを考えている。
「……先生?」
「……ひばり君。探しに行くぞ」
「え?」
いきなり久堂先生はソファから立ち上がって、右の襖に向かう。
「申し訳ない、五十嵐先生。少し、屋敷内をうろつかせてもらいます」
「えっ!ちょっと、先生っ……!?」
久堂先生は襖の右側から出て、スタスタと廊下を歩き始めた。
「まっ、待って、先生っ……歩くの、速い…!」
第3章
私と久堂先生は約十分で五十嵐邸の全ての部屋を探索し終わった。
「…つ…疲れた…」
「何をそんなに疲れているのかね?」
久堂先生は私が疲れているのにも関わらず、しらばっくれた様な素振りをする。
「先生が歩くの速すぎるんですよ!私、後半ほとんど走ってましたよ!?」
「阿破破!」
く、くそぅ……さては気づいてたな……
「それで?見つかったのか?」
客間に帰ってきた私達に、五十嵐先生が問う。
「いえ……全ての部屋を探したんですけど……」
「誰が全ての部屋を探したと云ったのかね?」
「え?」
私は、久堂先生の訳の分からない発言に、驚くことしかできなかった。
「ちょっと、先生?また探すんですか?」
確かに全部の部屋を探したのに……
久堂先生は襖の前に立ち、話し始めた。
「この客間に入る時は全員、いつも右側の襖を開けて入る。おかしいとは思わなかったのかね?」
「……あ!」
確かに。この屋敷に来て、この客間に入ってから、この屋敷の人達皆、襖の左を開けていない。
「それともう1つ。この屋敷は、一階建ての設計では異常な高さをしている。」
久堂先生は人差し指を立て、天井を指す。
「ひばり君。疑うのならひとっ走りして本当かどうか見てきたまえ」
「えっ!?いやそんな、私、疑っては……」
「疑ってなくとも確認してこい」
他人の家でも人使いの荒らさはいつもと変わらないんですね!
「もうっ!なんで私がぁっ!」
数分後。
「…た…ただいま戻りました…」
なんか、ここ最近、ずっと走ってるような……
「どうだったかね?」
久堂先生がお構い無しに問いかけてくる。
ひ、他人事だと思って……!
「…えと…私、設計とかあまり分からないんですが…まあ、この屋敷と並んだ一戸建てと比べたら……部屋1つ分、高かった……かな?」
「だ、そうですが。どうなんでしょうか、五十嵐先生」
久堂先生は五十嵐先生を向き、五十嵐先生の答えを待つ。
「……この屋敷の二階は、存在するよ……。ただし、二階は聖君の部屋と、書庫ぐらいしかないがね……」
久堂先生の推理は、当たっていた。
「……でも、襖の件は?この屋敷の人達は何故、右側の襖しか開けないんでしょうか」
「簡単な事だ。この屋敷には二階が存在する。しかし、二階に上がる為の階段などはどこにも見当たらない。という事は……」
久堂先生は襖の左側の前に立ち、左側の襖を開けた。
「あ……!」
襖が開いた途端、木でできた隠し階段が現れた。
「…嘘…!」
久堂先生は、この屋敷に来てからずっと、この隠し階段がある事を推理していたんだ。
「聖さん!」
凪さんが、血相を変えてその階段を昇る。
「な、凪さん!?」
私が呼んでも、返事はない。
「わ、私達も行きましょう、先…」
「いやぁぁぁッ!!!」
私が久堂先生に呼び掛けようとした所で、凪さんらしき人の叫び声が聞こえた。
「先生っ……凪さんが!」
「……とりあえず、上に上がるしかない」
久堂先生は冷静に、隠し階段に足をかけた。
******
階段を上り、二階に上がった所、そこでこの五十嵐邸が『古書屋敷』と呼ばれる理由が分かった。
「これは……全部本……?」
二階の一室に出たらしく、その部屋は隙間無く本が並べられていた。
「凄い……こんなに沢山の本、どうやって……」
「君は私に貧乏と遠回しに云っているのかね?」
朝のように久堂先生のこめかみに青筋が浮かぶ。
話をそらさなければ……
「で、でも、こんな沢山の本、どうするんでしょうね」
微妙なそらし加減だった。
「……別にどうもしないだろう。ただ集めてるだけじゃないのか?」
「え?じゃあ五十嵐先生は久堂先生と同じ、収集癖って事ですか?」
久堂先生のこめかみに消えかけていた青筋が再び浮かぶ。
「あんな成金狸と一緒にするな」
わぁ、久堂先生の本音だ……
「うーんと……とりあえず、この部屋出て、凪さんを探しましょう!」
この会話で二、三分はロスしてしまった。
私は襖を開け、踊場へ出る。一階の様な普通の屋敷の間取りではなく、踊場を真ん中に造り、丸く円を描いて部屋が並んでいた。
意外に狭い。一階の半分程度しか面積は無さそうだ。
そして、私達のいた部屋の向かい側の部屋から三部屋目の部屋の前に、凪さんが部屋の中を見ながら、力無く座っていた。
「凪さん……?」
私達は凪さんの傍に駆けつけた。
凪さんの傍らには、戸をこじ開けた形跡が残っていた。
私は思わず、凪さんの見ている方向を素早く見てしまった。
そこには、霧島さんが、
天井から縄で首を吊っていた。
第4章
「……霧島さん……?」
信じられなかった。
霧島さんが、死んでいた。
「……ひばり君、見たまえ」
久堂先生が、机の上にあった紙を手に取る。どうやら手紙の様だ。
「…『遺書』…?まさか……」
霧島さんは……
「嘘よ!」
茫然と霧島さんの姿を目を見開いたまま見ていた凪さんが突然、私達に向かって大きな声を出した。
「そんなの嘘!聖さんが、聖さんが自殺なんて……」
凪さんは遺書を見て、霧島さんが「自殺」をしたと思ったのだろう。
そして凪さんは、両手で顔をふせて、泣いてしまった。
でも私は、何故か違和感を感じてしまった。
霧島さんは、血も繋がっていない筈の五十嵐先生の家に住んでいられて、しかも二十歳という若さで小説家になれた幸運な人なのに、何故、自殺なんてしたのだろうか。
私……いや、多分久堂先生も、その事が不思議で堪らなかった。
*****
私達は一階に下りて、その事を屋敷全ての人に霧島さんの死を告げた。
「……その遺書は、なんて書いてあるのかね?」
五十嵐先生が、眉間に皺を寄せた表情で、問いかけてくる。
「……先生……」
遺書は、久堂先生が持っていた。
「……白紙だ」
「ハクシ?くしゃみですか?」
私は意味が分からず、久堂先生に云ってみたが、人を蔑む様な眼差しで久堂先生は私を見た。
「……君は小学校からやり直した方が良さそうだ」
かなりダメージをくらった。
「白紙。真っ白で何も見えないのだよ。」
久堂先生は半分馬鹿にして、もう半分は意地悪で、もう折り畳んだ遺書で私の頭をぺしぺしと叩いた。
「ちょっ……ちょっと見せてください……」
私は久堂先生の手を止め、遺書をその手から取った。
「……本当だ……何も書いてない……」
どうして白紙なのだろう。なら何故、霧島さんは遺書を机の上に置いておいたのだろうか。
………あれ?
「……ここ……何か赤色が染みて……」
私は、手紙の右下の端に、赤色の染みの様なものを見つけた。
模様?違う。こんな小さな染みで、しかも紙からはみ出てる。こんな不自然な模様は無い。何かこう、飛び散った様な……
「……これ、血痕だ……」
私は思わず、声に出して云ってしまった。
「…先生、遺書が入っていた封筒、貸してください」
久堂先生が持っていた封筒を受け取り、隅々迄見る。
血痕らしきものは無かった。
「……久堂先生、もう一度、二階に上がりませんか?」
****
と、いうわけで私と久堂先生はもう一度二階へ上がった。
そして、殺人現場の霧島さんの部屋に入る。
霧島さんの遺体は既に、五十嵐先生と丁度きた時間制のお手伝いさんの手で下ろされている。
「……やっぱり……先生、これは……」
「殺人事件、だな」
久堂先生は私が云う前に分かっていたらしい。
さっき私が見つけた遺書の血痕は、壁の隅にこびりついた、これはまた小さな血痕と見事に合致した。
「絞殺……でしょうか。」
私は顎に手を当て、探偵の様に考える。
……まあ、一応探偵のつもりなんだけど。
「その前にまず、この血痕は霧島君のどこを傷つけて付いた血痕か……まあ、足だろうな」
「…何故、足なんですか?」
「足を傷つけておけば、絶対に逃げられないだろう。しかもこの血痕の位置、どうみても足……しかも付け根や踵辺りだ。考えるとすれば、踵の上の辺りをナイフか鋏で……グサッ……と、いう感じかね」
久堂先生はしゃがんで壁にこびりついた小さな血痕を指先で触れながら、淡々と喋る。
怖すぎる。
「……指紋やら何やら、人物を特定できる万能な物があれば良いのだがね、そういう物はまだこの世には存在しないし、そういう物に手を借りては名探偵の名が廃るだろう。さあ、この部屋で他に何か手がかりが見つかるといいな、名探偵殿?」
久堂先生は意地悪そうに口の端を上げて笑った。
また馬鹿にしてるのだろう。
しかし、血痕を探していてやっと気づいたけど、確かにこの部屋は荒れてる。
本棚からは本が何冊も色んな所に落ち、障子の襖は幾つも穴が空いて倒れている。倒れているのは恐らく、第一発見者の凪さんが無理矢理倒したからだろう。
犯人は、きっと密室にしたんだ。
考えていると、誰かの足音が聞こえてきた。
誰か、二階に上がってきたのだろうか。
「な……那智流さん……?」
部屋の前には、三女の那智流さんがいた。
「……何をしているのかね?下で待っていろと、云った筈だがね。私は死体やら血痕やらでぎゃいぎゃい騒がれるのが嫌いなんだ」
久堂先生がそう云った時、那智流さんが今まで下げていた頭を上げて、分からなかった表情をこちらに見せた。
悪寒がした。
その顔は、不気味に笑っていたのだ。
「……な」
「……な、なんですか……?」
「……ゆーな、ゆーな、みなまで云うな……♪」
那智流さんは、不気味な笑顔を顔に浮かべたまま、鈴が鳴るような声で、小さく唄い始めたのだ。
「…な…何なんですか、その唄……?」
私は思わず、退き、久堂先生の横まで来た。
未だ、那智流さんは唄を歌い続ける。
その時だった。
那智流さんの後ろ、つまり階段のある部屋の横の部屋から、赤いものがうねっているのが見えた。
私はそれが、炎だと理解するのに三十秒程かかった。
「先生!火事です!」
「……くそ、一旦一階に下りるしかないな」
私と久堂先生は霧島さんの部屋を出、階段のある部屋に向かった。
しかし、那智流さんは霧島さんの部屋の前に突っ立ったままだ。
「那智流さん!火を先に止めに行きましょう!」
私が那智流さんに云うと那智流さんはすぐ、私の方を向いた。
那智流さんは、私に向かって、声を出さずに、唇だけ動かした。
第5章
火事はとりあえず、階段のある部屋の隣の部屋から三つ目の部屋迄で消す事ができ、霧島さんの部屋は燃える事は無かった。
屋敷の中にいた私達は全員、屋敷の外に逃げる事ができた。
勿論、二階にいた那智流さんも、消防団の人に助けられた。
那智流さんはその後ずっと、俯いたままで、表情を見せる事は無かった。
「良かった……これで証拠とかが消えちゃったら、どうしようかと思った……」
私は胸を撫で下ろした。すると久堂先生が私の隣に来て、話しかけてきた。
「……確かに、この火事は犯人が仕掛けた、証拠隠滅の火事だろうな。しかし、それは失敗に終わり、これで私達が犯人に王手をかけた訳だ」
「……もしかして先生、もう犯人解ってます?」
私はおそるおそる、久堂先生に聞いてみた。そうしたら久堂先生はまた蔑む様な眼差しで私を見た。
「君はこんな簡単な事件、まだ解らないのかね?」
「えぇぇっ?」
「全く、犯人の考える事は理解不能だ」
久堂先生は意地悪そうに口の端を上げて笑った。
勿論、犯人はこの屋敷の中にいた誰か。
でも犯行時刻、五十嵐先生、長女の葵彌さんは私と久堂先生と一緒に客間にいた。
客間にいなかった次女の凪さんと三女の那智流さんも台所で、家事をこなしていて、お互いがその証人だ。
犯人は誰?
………あれ?
何かおかしい。全てが上手く行きすぎている。
違う、違うよ。
あの人、嘘、ついてる。
「……謎解きはもう、お仕舞いです、先生」
第6章
火事で燃えずに綺麗に残った一階の客間に、全ての者が集まった。
私の横には久堂先生、五十嵐家の人は全てソファに座っている。
「…ひばりちゃん、聖さんを殺した犯人が解ったって……本当?」
長女の葵彌さんが私に問いかけてくる。
……私もまだ、この推理が合ってるかどうか、分からないんだよね……
「……はい。」
「…聖さんを殺したなんて……酷い、許せない……
」
次女の凪さんは未だに泣いている。
「……ところで次女の凪さん。貴女は、被害者の霧島聖さんと、どの様な関係だったんですか?」
私は、推理を始めた。
「どの様な関係かって……」
凪さんは顔を上げて、こちらに顔を向けた。
涙で顔は濡れていた。
「貴女と霧島さんは、夫婦だったのではありませんか?」
「ど、どうしてそれを……?」
確かに、今日始めて会う人物、それも女学生に聞かれたら、驚くに決まってるだろう。
「…いえ、霧島さんが殺されて、貴女の反応があまりに親しい関係の人物の反応だったので…それに血縁者でもない五十嵐先生宅に住む理由なんて、居候か婿養子くらいかな、って……」
「……確かに、私と聖さんは夫婦…でした。それが何か……?」
「えっと……確認しただけなんです。ありがとうございます」
私は凪さんに礼をして、本題に入った。
「殺人現場は、酷く荒れていました。それは霧島さんが生前暴れた……という訳ではなく、ただ犯人が、そう見せ掛けただけのようです。」
全員、私の推理を静かに、一言も喋らず聞いていた。
「先程の火事も証拠隠滅の為です。そして重要な事がひとつ。
現場は密室でした」
緊張のせいか、握っている手は汗をかいていた。
「現場の障子は、ほとんど穴が空いていました。それは小さな穴から、刃物で切られたような穴……沢山ありました。
犯人は、密室を作る為に、穴を空けたんです」
「何故、穴を空けたのかね?やはり、聖君が生前暴れたと見せ掛ける為かね?」
五十嵐先生が私に問う。
緊張してたが、私はすんなりその答えが頭の中から出すことができた。
「それもあると思います。でも、密室を作る為に、犯人は穴を空けたんです。
犯人は、つっかい棒を使って襖を開けれない様にして、密室を作るつもりでした。しかし、犯人は密室を作ったことがない、素人です。」
「…もしかして…障子に穴を空けて、部屋の中につっかい棒を入れたの……?」
葵彌さんがおそるおそる口を開いて、答えた。
「ご名答です、葵彌さん。しかし、ひとつばかり穴が空いていては不自然でしょう。だから、部屋を荒らしたのをいい事に、犯人は障子に穴を空けました。」
「密室の作り方は解った。じゃあ、犯人はどうやって聖君を殺したのかね?」
「犯人は霧島さんの踵辺りを切断し、逃げられなくしたあとすぐ、用意しておいた縄で霧島さんの首を絞め、殺した後、天井から吊るし、自殺に見せ掛けたんです」
「そんな事、誰でもできる。
犯人は一体誰なんだ、名探偵!」
名探偵って云われても、私も本当に合ってるかどうか分からないって……
私は、犯人を指差してみた。
「犯人は貴方です
五十嵐……凪さん」
暫くの沈黙。
初めて口を開いたのは、犯人の凪さんだった。
「どうして?どうして私が、夫の聖さんを殺さなければならないの?」
「動機は分かりません。でも、私の推理の結果は、貴女が犯人でした」
「私は、妹の那智流と一緒に台所にいたわ!那智流が証人よ!」
「那智流さんは私と久堂先生が二階から下りる時、こう云っていました。
『凪姉様を助けて』
と……。私は、最初は意味が分かりませんでした。でも、貴女が犯人だと解った時、意味が分かった。
貴女は那智流さんを強迫していた。『みなまで云うな』と。その唄を、私達二人の前で那智流さんは、私達と自分自身、そして凪さんの為に歌った。
全て、貴女の為の行為です」
「……でも、その証拠がないわ。証拠がないくせに、そんな偉そうな口叩いていいの?」
勝ち誇った様に凪さんは笑った。
どうしよう、証拠がない……!
どうしよう、頭がこんがらがって、何を云えばいいのかも分からない…!
私は思わず、目を瞑った。
助けて、先生……!
「証拠ならばある。決定的な証拠がね」
隣から、久堂先生の声。
「何……?」
久堂先生はひとつ空いていた一人用のソファに腰掛け、脚の上に腕を乗せ、手を組んだ。
「遺書だよ。あの白紙の。」
「……遺書……?」
「君はどうせ、すぐには殺さなかったのだろう。霧島君はその隙にこの遺書を書いた。」
「…でも、その遺書は白紙。何も書いてないわ。馬鹿じゃないの?」
凪さんは今までとは別人の様に振る舞い、鼻で笑った。
しかし、久堂先生は余裕の笑みを見せ、鼻で笑った。
「馬鹿なのは君だ。誰が『書いていない』と云ったのかね?言葉の意味を考えたまえ」
「なんですって……!?」
……ちょっと待って。久堂先生は、私達に遺書を見せた時、なんて云ってたの?
『白紙。真っ白で何も見えないのだよ。』
……あ!
「先生は、『書いていない』とは云わず、『見えない』と云った……!」
「……と、いう訳だ。ひばり君、君はメモ用にペンを持っているだろう」
「……あ、はい!」
私は久堂先生に云われたとおり、凪さんの前にペンを置いた。
「その遺書は白いインクで書かれている。君の目の前に置いたのは鉛筆だ。自分の手で確かめたまえ」
そう云われ、凪さんはおそるおそる白紙の遺書を黒く塗り潰し始めた。
暫くして、全て塗り潰した真っ黒の遺書は、こう書いてあった。
『犯人ハ、イガらしナギ』
と。
決定的な証拠だった。
「っ……!」
凪さんは絶句した。
「凪さん。教えてください。どうして、霧島さんを殺したんですか?」
「あいつが……あいつが悪いのよ!私という者がありながら、あんたみたいなおさげの女学生なんかと付き合おうとか考えて!私は知らない、私は正義よ!」
「っ……」
霧島さんが死んだのは、私のせい。
何故か、私も霧島さんを殺した、凪さんの共犯者に思えてきた。
「で、君は何が云いたいのかね?全く、男の嫉妬程醜い物は無いと云うが、女の嫉妬程汚い物は無いな」
久堂先生はそう云い捨て、立ち上がった。
「あ、先生?どこへ……」
「帰るに決まってるだろう。こんな茶番には付き合ってられない。原稿ももらった。帰るぞ。」
そう云う久堂先生の手には、いつの間にか霧島さんの小説の原稿があった。
久堂先生は客間を出てしまい、私は強い視線を感じた。
凪さんにはかなり睨まれたけど、後ろに立っていた那智流さんが顔を上げて、笑ってくれた。
その笑顔は不気味というものとはかけ離れていて、
さっぱりとした、向日葵みたいな笑顔だった。
私はつい嬉しくなって頬が緩んだ。
にやけてるのが自分でも分かる。
私はとりあえず礼をして客間を出て、玄関で靴を履いて、
『古書屋敷』を出て、先生を追いかけた。
最終章
「はぁー……散々な一日だったなぁ……」
私と久堂先生は、二人で帰路についていた。
辺りは既に暗く、道端に小さな外灯が明かりを灯しながら並んでいた。
「全く、散々な目に遭ったな」
久堂先生は何故か、不機嫌気味だった。
……そういえば、霧島さん、私に何の用だったんだろう。
聞きそびれてしまった。しかも、もう二度と、聞くことはできないのだ。
「……嗚呼、もう霧島さんに会えないのかぁ……寂しいなぁ……」
声に出したら、目の奥の方から、熱いものが込み上げてきた。
前を歩く久堂先生の背中が何故かぼやけて、遠く感じた。
「……先生、歩くの速いです。レディの足の速さに合わせてください」
文句を云ったら、文句が返ってきた。
「……君が歩くのが遅いのだよ」
先生は優しさを知らないんだ、きっと。
「……もしかして、私があの時、すぐに何かしら気づいていたら
……こんな事にはなってなかったのかな……」
「……これも運命だった。仕方のない事だったのだよ」
先生が振り返らず、前を向きながら云った。
「でも……少しは防げたかも、しれないじゃ、な……」
私が喋らなくなったからか、先生は振り返って私を見た途端、一瞬だが驚いた様な表情をした。
「……何故、泣いているのかね」
先生が呆れた様に云って初めて、私は自分が泣いているのに気がついた。
「……あ、本当、何で泣いて……」
云いかけて、溜まってたのが溢れた。先生の背中に抱きついた。
先生の外套(コート)は、私の好きな、本の匂いがした。ついでに、珈琲の匂いも混ざってた。
「……なんだね」
「レディが泣いてるんですよ、慰めてください」
「君はレディじゃなくてガールだと思うが」
「先生の馬鹿ぁぁぁ!」
大泣きしてやった。
そしたら、近所迷惑だとちょっと怒られた。
「先生」
「なんだね」
「私、霧島さんが、云いたかった事、聞けなかった」
「ああ」
「もう、霧島さん、に、会えない、云いたかった、事聞けな……」
「云いたい事は分かった。君は頑張り過ぎたのだよ」
久堂先生は、そう云って私の頭に手を乗せた。
その手は、温かった。
その途端、髪をぐしゃぐしゃにされた。
「な、ななな何するんですか!人が折角しんみりした感じ出してるのに!」
「何がしんみりした感じかね?私の外套(コート)に涙ぐしゃぐしゃにつけやがって。どうしてくれる?」
「最低!意地悪!鼻水も付けてやる!」
「つけたら夕飯は無いな」
「いやーっ!夕飯だけは勘弁してくださいっ」
またいつもの調子に戻ってしまった。
微妙に優しいなー…と思った私が馬鹿でした!
私は、近所迷惑も気にせず、意地悪そうに笑う久堂先生に向かって、叫んだ。
「嗚呼!先生!」
【二次創作】古書屋敷殺人事件
まず一言。
すいませんでした。
最終章、なんか恋愛フラグたってますね。
妄想激しいです。すいませんでした。
あとがきっぽい事ですか?求めてない?
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
2012年12月10日現在で72セッションて!
50セッション超えするとは思っていませんでした
本当にありがとうございます。
最後に一言。
『久堂×ひばり』でこの小説ググったの誰だ(笑