仮面

僕は仮面をたくさん持っている。

小さい頃から仮面が好きだった。
ヒーローの仮面。友達とよく一緒に被って遊んだ。
お化けの仮面。肝試しで友達を驚かせた。
変な顔の仮面。友達と見せ合って笑い合った。

仮面の数が増えていった。

笑顔の仮面。友達と話すときによく使う。
泣き顔の仮面。友達は心配してくれ、相談に乗ってくれた。
怒った顔の仮面。友達とケンカして以来使っていない。

仮面の数が増えていった。

ある日、友達に「仮面ばかりで気味が悪い。」と言われた。
ある日、友達が自分の陰口を言っているのが聞こえた。
ある日、僕は友達と一切話さなくなってしまった。

仮面の数を増やすのをやめた。

ある日、僕は仮面をつけずに友達と会った。
友達は「どちら様でしょうか。」と僕に聞いた。
別の友達に会った。「人違いだと思います。」と言われた。
先生にも会った。「君みたいな生徒いたかな。」と言われた。

誰も僕を覚えていなかった。
誰も僕を知らなかった。
本当の僕って一体誰なんだ。

仮面の数がまた増えていった。

僕は仮面をたくさん持っている。

仮面

仮面

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-02-04

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