仮面
僕は仮面をたくさん持っている。
小さい頃から仮面が好きだった。
ヒーローの仮面。友達とよく一緒に被って遊んだ。
お化けの仮面。肝試しで友達を驚かせた。
変な顔の仮面。友達と見せ合って笑い合った。
仮面の数が増えていった。
笑顔の仮面。友達と話すときによく使う。
泣き顔の仮面。友達は心配してくれ、相談に乗ってくれた。
怒った顔の仮面。友達とケンカして以来使っていない。
仮面の数が増えていった。
ある日、友達に「仮面ばかりで気味が悪い。」と言われた。
ある日、友達が自分の陰口を言っているのが聞こえた。
ある日、僕は友達と一切話さなくなってしまった。
仮面の数を増やすのをやめた。
ある日、僕は仮面をつけずに友達と会った。
友達は「どちら様でしょうか。」と僕に聞いた。
別の友達に会った。「人違いだと思います。」と言われた。
先生にも会った。「君みたいな生徒いたかな。」と言われた。
誰も僕を覚えていなかった。
誰も僕を知らなかった。
本当の僕って一体誰なんだ。
仮面の数がまた増えていった。
僕は仮面をたくさん持っている。
仮面