空虚


ある男は誇らしげに言った。
「おれは、おれの生を、おれのやり方で生きる」
と。そして、きちんと朝飯を食べ、
今日もまたスーツを着て出勤していったのだ。
ある時は
「おれは、自由に生きている」
と。そして、日曜の休日を過ごすのだった。

ある方はすました顔で言っている。
「誰々は、大したことない」
と。ぺらぺら本をめくって。
空気はよどんでいる。

ある奴は熱っぽく
「みんな、何も考えていない!」
と、ひとり憤っていた。



彼らは
死んでいるのだろう。

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と、いま
紙に書きつけている男がいる。

男はいま
しんでいるのだろう。

空虚

空虚

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-02-02

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