流出


ぼくはこのインクに溶けだして
ペン先から紙の上へと流出する
流れだしたぼくは
紙の奥底に沈んでゆき そのまま
眠ってしまう ひっそりと

実体のないぼくは
実体となることによって
失われているよう

あいまい
な ぼくは
耳をそばだてている
底で眠っているぼくの
かすかな寝息をたよりに
おずおずと
さまよう

流出

流出

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-02-02

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