未知


あそこに戸がある
あの戸を開けたら 向こう側には
もちろん何かしらの空間があるだろう
 (あるいは ないかもしれないが)
あの戸を内側から開けたら
そこからの外の光景が見えるだろう
それを
何百 何千…
幾度となく繰り返している人は
どこかにいるだろう
私が 私の家の玄関の戸の向こう側と
戸からの外を
数えきれない(本当に数えきれない)くらい
繰り返し見てきたように
だが
あの戸 の向こう側
あの戸 からの外
など 生涯見ることはないだろう

限られすぎている 世界は、


からすが飛んでゆく 空高くを
すずめがとまっている 飛んでゆく
野良猫が 街の陰に消える


歩き去ってゆく人々
自転車で走り去る人々
過ぎ去る車 の中の人々
今日も会った人
さっきまで私といた人

すべてが
いま 見えない
なにもかもが 見えていない いま
どうしようもなく、


未知

未知

未知

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-02-02

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