たび


ぼくは なにを…
 葉のささやきの中に、陽の輝きの中に、陽の傾きの中に、流れる雲の中に、落ち葉の中に、見慣れた光景の中に、長く伸びた影の中に、オレンジの陽差しの中に、白い陽差しの中に、月明かりの中に、窓についている水滴の中に、自らが踏みしめるこの足音の中に、雨のにおいの中に、雨音の中に、まぶしい車のヘッドライトの中に、幼い頃のぼくの中に、遠い空の中に、日々の迷いの中に、一日を短いと感じるこの感覚の中に、街並みの中に、喫茶店での一時の中に、陽の輝きに透ける葉の姿の中に、鏡にうつる自分の中に、ふとよみがえる思い出の中に…
ぼくは なにを いつから?
探しつづけているんだろう
ということに気づいてしまって
それから この胸に迫ってくるこの感覚は?
これは何なの?
どうして涙がこみあげてくる?

きっと…
ぼくは この命が続くあいだ ずっと
ずっと なにもつきとめることができないまま
それでも 探しつづける

たび

たび

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-02-02

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