そこらじゅう 鏡だらけ
だけど
全ての鏡がくすんでいて よくみえない
そして 困ったことに
ある鏡にとっては少しみやすい鏡でも
別の鏡にとってはとてもみづらい鏡だったりする

磨くと よくみえるようになる
だけど
みえるにはみえるんだから気にしないで、そのままの鏡もいる
あるいは
水 や ガラス や そういうものに映ることにする鏡もいる
(それらは不安定だ)

少しみやすい鏡をみつけたので
そしてちょうどよく その鏡にとっても 私はみやすい鏡らしく
磨きあった

磨けば磨くほど その鏡は輝いていった
磨けば磨くほど 鮮明に、自分の姿をみることができた
磨けば磨くほど その鏡は輝きを失いかけた
磨けば磨くほど 自分の姿は、不鮮明になりかけた

それからもうひとつ
とてもみづらい鏡をみつけたので
そしてふしぎにも その鏡にとっても 私はみづらい鏡らしく
磨きあった

磨けば磨くほど その鏡は傷だらけになった
磨けば磨くほど 鮮明に、自分を見つめることができた
磨けば磨くほど 鏡の奥をのぞきこむことができた
磨けば磨くほど 鮮明に、自分を見つめることができた

鏡は鏡でしか 自分をしっかり見つめられないのだと知る
全ての鏡が そういえば
きれいになった

そんな気がする

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-02-02

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