つめを切る

海百合 海月

 ちゃきちゃき、軽やかな音。とがったこころを、まあるくする。おだやかを纏うように。虫が鳴いた。なまえはしらない。十五度の冬暮れにて。金属のきしむ鈍い音。そろそろ寿命だ。冬の虫刺されをにくらしくかいた、やめたほうがいいのに。一瞬だけ。ちょっとだけ。たしかにあの時聴いた虫がぱたと落ちゆく音が、鼓膜に染みついてる。そうしてふと、思いだす。きにいりのつめ切りをさがしに出かけるのはあたたかい真昼がいい。ささくれをやさしく取り除いて、あとでクリームを塗ることを誓う。かみさまはそこにいる。らしい。信じないけど、べつにいると信じるひとを否定しない。そんなの、かって。信じないことに目くじらたてて否定するのはだからやめてね。三日月型のじぶんの一部だったもの。骨より手軽に持ち運んでよ、なあんて願望。

つめを切る

つめを切る

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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CC BY-NC-ND
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