詩う女子高生

あおい はる

 シカの群れ、ノースポールのなきがら、マグカップの底でとけきらなかったココア、午前三時のきみのつぶやき、トーストのうえの半熟たまご、テレビのなかで泣いている誰か、マイノリティーに理解あるふりをして腫れ物のように扱うマジョリティー。現代。
 ともだちの、三夜(みや)が、おもしろいから観てね、とすすめてきた映画が、とんでもなくつまらなかったことを、わたしは、ちゃんと伝えた、包み隠さずに、はっきりと。三夜は、うそぉ、と言いながら、けらけら笑ってた。おはよう、の一言に、おはよう、と返すのではなく、ハートマークに色をつける、その行為を、わたしは、ときどき、ふしぎに思っていた。なにがふしぎか、というと、うまくは説明できないのだけれど。インターネットって、すごくて、とつぜん、一日で、あっというまに有名人になったりすることを、三夜は、おしえてくれて、わたしもそうなりたいのだと、三夜はつづけて、語った。そうか、三夜は、有名になりたいのか。わたしは、自室の壁に貼ってある、世界の鯨のポスターのなかの、シナウスイロイルカのことを思い出して、こころのなかでそのなまえを三回ほど、唱えた。流れ星に祈るみたいに。シェイクで何時間粘れるか、というチャレンジは、もう、いまの世の中では通用しないよね、的な詩を、三夜は書いていて、とどのつまり、三夜は、詩で、有名になりたいのだった。わたしは、詩の良し悪しなどわからないひとだけれど、でも、三夜の詩は、悪くないと思った。なんか、かっこいいね、と、感じたままを告げたら、三夜は、ありがとう、と嬉しそうな笑みを浮かべていた。
 十九時。
 学校と、わたしたちの家のあいだにある公園の、木のベンチは、なんだか湿っぽくて、コンビニで買った肉まんは、ちょっと冷めていた。

詩う女子高生

詩う女子高生

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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CC BY-NC-ND
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