残光
ほんとうにかなしいときは
泣くことも 笑うこともできないんだって
こともなげにつぶやく
きみのかなしみに 僕は立ち入ることができない
怖いんだ
きみの感情を 穢してしまうのが
他人を理解するなんて 誰もできないから
他の誰かになったところで
他の誰かの孤独を また背負うだけだから
僕は自分以外の 誰にもなりたくない
きみがきみの孤独を愛しているように
僕も僕の孤独を愛している
きみが、泣きも笑いもしないきみが
不意にみせる 物憂そうな表情を
かすかに震えている手を まぶたを 唇を
慰める手段が僕にはもう
黙って抱きしめることしかない、ほんとうは
僕たちの孤独に 言葉はひとつもいらない
残光