残光

ほんとうにかなしいときは

泣くことも 笑うこともできないんだって

こともなげにつぶやく

きみのかなしみに 僕は立ち入ることができない

怖いんだ

きみの感情を 穢してしまうのが

他人を理解するなんて 誰もできないから

他の誰かになったところで

他の誰かの孤独を また背負うだけだから

僕は自分以外の 誰にもなりたくない

きみがきみの孤独を愛しているように

僕も僕の孤独を愛している

きみが、泣きも笑いもしないきみが

不意にみせる 物憂そうな表情を

かすかに震えている手を まぶたを 唇を

慰める手段が僕にはもう

黙って抱きしめることしかない、ほんとうは

僕たちの孤独に 言葉はひとつもいらない

残光

残光

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-01-29

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