いつかのための習作②

今から会えませんか?と、若き小説家は先生にメッセージを送った。返信はすぐに返ってきて、その本文は「頭痛が酷い」とだけ。無性に会いたい、というより、先生に抱かれたかった若き小説家は、頭痛薬を持っていくとか何か食事を作らせてくださいと食い下がった。「低気圧にやられてしまったようだ。最近抑うつ気味だったからね」「この低気圧が去れば快復するだろう。心配ご無用」
若き小説家が無性に先生に抱かれたい状態にあることを先生の方でも察知できたのであろうと若き小説家も察知した。
台風並みの風と気象予報士が言っていた。窓をガタガタと鳴らしていくから単にうるさいのと、少しの恐怖。恐怖は性欲を増幅させる。これも単純な思考だが、恐怖を感じると身体を重ね安心したいのだ。
若き小説家は放ったスマートフォンを再び手に取り、あるSNSに「掘ってください」と書き込んだ。若き小説家の自宅の近所にある公園はいわゆる盛り場となっていて、その公園で盛りを目的としたSNSまで存在しているのだ。
煙草を1本吸ってから、再びそのSNSを覗くと、若き小説家の書き込みに対して「掘りたい」と返してくれている人がいた。若き小説家は「30分後くらいに着きます」と返し、いそいそと『掘られる準備』に入った。

いつかのための習作②

いつかのための習作②

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-01-29

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