波の音
そして だれも海を知らなかった きょう わたしたちが海辺を歩くまで 由比ヶ浜を歩くまで きみは喋らなかった 夜の海を見つめて
わたしは わたしの目を閉じた 夜の海は真っ暗だった だから 耳を傾ける 暗闇のなかに 波の音だけがきこえる
そして もう わたしには こんなにもきみをいとおしくおもっている わたしには そのことが こんなにもかなしい
かなしいことがあったとき わたしはそのわけをきかずに きみがかなしいときには わたしもかなしいという
わたし自身のかなたに
そして きみ自身のかなたに
とおく離れてしまった かなたに
波の音