ケモノ会議

注意事項
①米印はト書きです。読まないでください。
②カッコ内は読んでください。
③この作品は、男性2人と女性2人、男女どちらか1人の5人による声劇です。
④ややグロテスクなシーンがございます。ご容赦ください。

ケモノ会議

〔登場キャラクター〕
・ライト(犬/♂)…元気いっぱいの勇敢な犬。
・マリア(猫/♀)…お姉さん感漂う高貴な猫。
・トモヤ(梟/♂)…物知りな年配梟(フクロウ)。
・エレン(狼/♀)…狙った獲物は逃さない百発百中の暗殺者。
・ナレーター(N表記、男女どちらか。言い換えOK)


N:ここは田舎のとある山の中。飼い主の家から脱走をしてきた犬のライトは逃げてきたはいいものの道に迷い途方に暮れていた。

ライト:飼い主のあの性格に耐えられなくて逃げては来たけど、ここは一体どこなんだ?歩いても歩いても同じ景色。誰もいないし何もない。

参ったなぁ~。(※溜息)

N:日もとっくに沈み、辺りは真っ暗。一寸先は闇とはまさにこのこと。一歩先が何なのかも予測できないまま道を進むと、2つの明るい何かを捉えた。

ライト:ん?何だ??

マリア:…。

N:ライトはそれらの方向に向かう。敵対心は無いのであろうか?2つのそれらは一向に動く気配は無し。

ライト:誰かいるのか?いたら返事の1つでもしてくれ~。お~い。

マリア:…。

ライト:お~い、誰k…。

?!

トモヤ:!!

N:恐る恐る近づいて行った方向とは別の箇所から別のそれらを確認したライト。しかも、それは彼を警戒しているかの如く注視していた。獲物を狙っているようにも見える。

トモヤ:敵じゃ敵じゃ敵じゃ敵じゃ!!

侵入者は許さんぞォ~!!覚悟しろ~!!

ライト:アアアアーーーーーー!!!(※絶叫)

(殺される~!!!!)


マリア:おじいさん!ちょっと待って!!
彼は何も悪いことはしないわ!!

トモヤ:?!

ライト:…。
(※放心状態)


N:猫が梟を宥(なだ)める姿はかなりの絵面(えずら)だが、余計な被害を生まなかった分まだマシである。

少し時間の経った後、自己紹介とこの状況の訳を話し合った。

ライト:え、えっと…。

マリア:貴方、何も気にする必要はないわ。こちらの勘違いで起こってしまったもの。謝るのはこちらの方よ。

トモヤ:儂(わし)の方こそすまなかった。

おっと、自己紹介がまだじゃったのう。儂は“トモヤ”じゃ。この山のことは何でも知っておる。云(い)わば、“山の主(ぬし)”みたいなもんじゃ。
それで、儂を静止してくれたのが、猫の“マリア”じゃ。なかなかの別嬪(べっぴん)じゃよ。

マリア:マリアよ。初めまして。

(私の事を別嬪だなんて…。少し照れますわ…♡)

ライト:トモヤさん、マリア“お姉さん”。

俺は“ライト”。犬のライト。飼い主に嫌気が差してこっちまで脱走してきたんだ。でも、何故速攻で襲撃未遂に合わなきゃならなかったの?

マリア:ライトくん。

…これにはね?深い事情があって、かなり深刻なの。

ライト:深い事情?

トモヤ:そうじゃ。儂が話をするとしよう。

実はな?ここ数日の間にこの山の動物たちが見るに堪えない姿となっておるのじゃ。変わり果てた姿をお主(ぬし)が目にしたら絶句は避けられぬじゃろう。それも、一回や二回どころではない。ほぼ毎日のように。酷いときは、一日に13回も被害報告を聞くほどじゃ。

ライト:それって、人間がしたんじゃないんですか?

トモヤ:ライト、って言ったかのう?少しそこで待っておれ。見せたいものがある。

N:そう言ってトモヤは暗闇に消えていった。

マリア:それがね?犯人は人間じゃないのよ。

ライト:え?狩猟とか密猟とかそんなことじゃないの?

マリア:そうなの。

銃の発砲音は全く聞こえない。けれども、あられもない姿となってしまっている。

ライト:…。


トモヤ:お~い!持ってきたぞ~!!


N:こちらに近づくようにして聞こえるはトモヤの声。

持ってきたのは、その被害を受けた一匹のリスの姿。

ライト:こ、これは…。

トモヤ:この姿を見て、人様(ひとさま)がしたとは思えんじゃろ?

ライト:確かに…。手荒な感じが見て取れますね。

トモヤ:じゃろ?“狼”のせいなのじゃ。

ライト:狼?

トモヤ:名を“エレン”とか申して居(お)ったわ。声からして、雌じゃろうなぁ。

のう?マリア。

マリア:えぇ、そうですね。あの感じはどうも雄ではございません。

ライト:(女って、怒らせると怖いんだ…。ヤンデレだったら、マジで面倒くさそう…。)

トモヤ:そやつは名うての暗殺者じゃ。静かに近づいては一気に食らいつく。
“あの姿”が周りを見渡す限りに広がる光景は、まさに地獄絵図。一日一日を何とかして過ごすことで手一杯じゃ。

ライト:(何とかしてソイツを倒さないと…。)

トモヤ爺さん。

トモヤ:ん?何じゃ?

ライト:“俺、マリア姉さんを護ります!”

マリア:え?私?!

トモヤ:そう来たか。

ライト:話を聞いていると、次のターゲットとして彼女が狙われる気がしてならないんです。どうせ脱走して着の身着のままな俺です。こんな命、惜しいなんて思いません。

マリア:ライト君…。

トモヤ:…。

ライト:…。


エレン:…。


N:しばらくの沈黙を過ぎ、トモヤは決断した。

トモヤ:ライトよ。

ライト:はい。

トモヤ:“マリアくんのことを頼む。”

これ以上の被害を出さないためにも、護衛として頼む。

ライト:はい!

マリア:ライト君!

N:この会議の後、数日の間は被害報告なし。

“嵐の前の静けさ”である。


エレン:(あの猫、何としてでも命を頂くわ…。ついでに、邪魔犬も始末するの。

私の最終目標はアイツを倒すこと。遂行させるわ…。)


マリア:ライト。

ライト:マリアお姉さん…。

マリア:ライト。私の事は、呼び捨てでいいわよ。

何か、ボディーガードが付くって変な感じがするのよね。

ライト:マリア…。

マリア:貴方は、もとはと言えば飼い犬。ある意味では、“ボディーガード”が付いていた。トラブルが起きても助けてくれるし、体のメンテナンスもしてくれた。

今は私の護衛になっているけど、“誠実さのある素敵な犬”ってことはわかるわ。

ライト:…何だか、照れますね。

マリア:うふふ♡


N:ここで、ライトとマリアのちょっとしたいきさつが公開されることに。

ライト:実は、こう見えて軍用犬でした。日本の自衛隊で活動していました。
“K9(ケーナイン)”の日本支部的な感じです。

マリア:え?!かなりのエリート君だったの?!

ライト:そうですね。勲章もかなりの数を獲得しましたから。ざっと50。

マリア:50?!

ライト:えぇ。

…ただ、現役を引退してからは一般の飼い犬のような行動ができなくて。
完全に部隊所属時のままの身体でしたね。
“職業病”って言えばそれでおしまいですが。

マリア:何だか、“私の憧れの王子様にお目にかかれた”って気分だわ。

ライト:アハハ。一応、“兵犬(へいけん)”でしたから。
王子様呼ばわれは嬉しいですけど、恥ずかしいですねw

あと、“猫が犬に憧れる”ってアリなんですか?

マリア:アリだと思うわよ。

貴方が初めて私を見たとき、襲おうとはしなかった。大抵の犬は襲いにかかるけど貴方は違った。特別な何かがあると思っていたわ。そうしたら、BINGO。優秀ね。

私も、本当のことを言えば飼い猫だったのよ?

ライト:え?飼い猫??

じゃあ何で…。

マリア:貴方と同じ理由よ。私は猫。自由気ままなの。たまたまこの森に迷い込んでしまったってわけ。
まぁ、元々この山は迷える動物たちの憩いの場みたいなものなの。のびのびと生活できるという点では理想的ではあるんだけど、セキュリティがなってないの。だから狼にやられっぱなし。護衛をしようという勇敢な持ち主も現れず、被害件数だけが上がるばかり。

ライト:…。

マリア:だから…。

ライト:…?!

N:ライトに近づくマリア。鼓動が高鳴る。

マリア:“貴方しかいないの。私を護って。”

ライト:…。(照)

“了解しました”


N:2匹の姿の様子を伺うエレン。今襲撃しては返り討ち。


エレン:あの犬、かなり面倒くさそうね。
何とかして避(よ)けねばならないけど…。

“私にだって、作戦はあるもの…♡ウフフ…♡”


N:不敵な笑みを浮かべるメンヘラ狼。狙った獲物は地の果てまでも追いかける。


マリア:ふぁ~。私もう寝ますわ。

ライト:私もです。

“傍(そば)に失礼します。”

マリア:ありがとう。

”おやすみなさい”


N:それからどれだけの日付が経ったのだろう?
人の噂も七十五日は、動物界でも通用するらしい。

この日は雨。大粒の雨粒がかなり強く降っている。


エレン:作戦決行にはうってつけね。

証拠隠滅も夢じゃないわ♡


N:かなりの悪天候のようで、ライトとマリアは近くの神社の軒下に避難をしていた。


マリア:何だか、嫌な予感がします…。

ライト:ご安心を。私がおります。


(※雷鳴が轟く〈とどろく〉)

N:激しい稲光と雷鳴。強烈である。

マリア:キャーー!!(※絶叫)

ライト:大丈夫、大丈夫。

N:マリアの近くで寄り添うライト。

…しかし、その背後から静かに迫るは黒き暗殺者。

エレン:雷神様、ナイスアシスト!

私に気付くはずもないわよね♡


N:マリアは衝撃のあまり怯えていた。


マリア:うぅ…。

ライト:(姫。私が必ず護衛いたします…。)


トモヤ:!!

(あの影!)


N:トモヤは気づいてしまった。

“魔の手は、もう目の前!!”


トモヤ:彼らが危ない!!

“お~い!!ライト!!敵はすぐそこじゃ!!後ろを振り向かんか~!!”


N:叫んでみたところでこのバッドコンディション。

気づくわけもない。

トモヤ:“狼は近くにおるぞ~!!!!”


ライト:!!
(今、何か気配が。)

マリア:…。


N:マリアは相変わらず怯えてしまっている。


エレン:(あ、バレたっぽい?)

ライト:“誰だ…。どこにいる…。”
(※低音で脅すかのように)


N:ライトが後ろを振り向く。

“互いに気づく!”


エレン:!

ライト:!

エレン:バレちゃ仕方ないわね。

“猫の命、頂戴するわ!!”

ライト:(ヤバイ!姫の周りがフリーすぎた!!)

“させるかぁ~!!!

うぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~~!!!!”


N:エレンに噛みつくライト。動きを封じさせる。

エレン;このッ!このッ!

(あ~!!もうじれったい!!〈怒〉)

ライト:させ、る、かッ!!


N:エレンの必死の抵抗。ライトも何とか噛みついたまま耐える。


マリア:…?ライト、さん…?


N:マリアが振り向くと、狼を必死に抑える“王子様”の姿。


マリア:“プリンス様!!”


エレン:コラッ!どけッ!!

ライト:させるかッ!!!!

エレン:ふん!ふん!!


N:ライトを柱にぶんぶん振り回しては当て続ける。

ライト:グ!ンァ!!ング!!

(ぜってぇ離さねぇ…。)


マリア:プリンス様…。

エレン:これでも喰らえ!!


N:エレンはその場で大回転。

堪(たま)らずライトは振りほどかされる。

ライト:ングググ…。

“あッ!!”


N:ライト、遠心力より柱に激突。

ライト:アーー!!!

N:“マリアの命は如何に?!”


エレン:い、頂きまぁ~s…。

“!”


マリア:“キャーーーーー!!!!!”


エレン:?!

“何奴(なにやつ)?!”


トモヤ:…。


N:エレンの目線の先には、じっと彼女を見つめる“梟”。しゃべろうとはしない。

エレン:貴様はだれだ?!

トモヤ:…。

エレン:おのれ!名を名乗れ!!

トモヤ:…。


N:トモヤ、エレンをただただ見つめる。襲う気はないらしいが、頭には来る。

エレン:え~い!!

“貴様もまとめて終わりじゃ~!!!”


マリア:ライト…。

“ライトぉ~~!!!!”(※大絶叫)


ライト:“オオオオオオオオーーーーー!!”

エレン:?!


N:ライト、最後の抵抗。

エレン:お、おのれぇ…!!

ライト:“姫を絶対に生かす!!!

俺の最愛のパートナーに手出しするんじゃねぇ~!!!!”

エレン:…ック!あ、頭が…。

ライト:これで終わりじゃァ~~!!!


エレン:邪魔じゃァ~~!!!


N:エレンはライトに頭をかまれたまま柱に突進。

“勝負あり…”


エレン:…。(※死亡)

マリア:王子様!!

ライト:ひ、姫…。

マリア:貴方!あなた!!

ライト:い、ニヒw(※少し笑う)

これで、平和だ。

マリア:!!

あなた!!!!


N:ライトは全身が血まみれ。肉も飛び出している。

“時間の問題であった…”


ライト:姫…。

あい、…。

マリア:“愛しております!!

私の王子様!!”


ライト:“ア・イ・シ・テ・ル…。”
(※息絶える)


マリア:う、うぅ…。

“ライトさぁぁぁぁぁぁぁ~~~~ん!!!!”


N:マリアは、自分の命が助かったのと引き換えに最愛の人の命を亡くしてしまった。

マリアは泣くばかり。


マリア:うぅ…。うぅ…。(※かなりの大泣き)


トモヤ:…。

(ライトくん…。ありがとう…。)


N:翌日。天気は快晴。虹も見られる。


トモヤ:マリアくん…。

マリア:ライトさん…。


トモヤ:彼は非常に勇敢じゃった。あんたの予想通りにのぅ。

マリア:…。

トモヤ:我々で弔(とむら)おう。感謝の気持ちも忘れずに。

マリア:…はい。


N:その後、山の仲間たちの協力も借りて墓が用意された。
立派なものだったそうだ。

トモヤ:ありがとう、ライトくん。この山を救ってくれて助かった。どうか、ゆっくりと休んでくれ。

マリア:王子様、私のために申し訳ございませんでした。
貴方と語り明かした夜は非常に素敵なものでした。
また語れることを楽しみにしています。

“愛しています、王子様。どうか私の事は忘れないで…。”


N:現在、その山は“雷伝説”という言い伝えが残され、ペットたちにとってのパワースポットとなっており、観光地として発展を遂げたそうだ。

ライト:“マリア!”

マリア:“ライト様!! ありがと~~!!!!”

ケモノ会議

訂正情報
・1月27日(水) 本文の一部を修正
・1月29日(金) 本文の一部を修正

ケモノ会議

これは、とある山の中での物語。動物たちは毎日がサバイバル。 それでも、生存競争は過熱していくばかり。危険もたくさんあるのです。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • アクション
  • 青年向け
更新日
登録日
2021-01-25

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