巡礼の日
朝
神様の声が聴こえなくなってしまった
おかあさんは笑ってお赤飯を炊いた
いつもより太陽が低い位置に見えた
おとうさんは黙って朝刊を広げた
艀は遠くへ
もう帰れない日々の翳
フイルムのように切り取られた今は完璧なように映し出されている
耳を塞いで目をつむっていても一番分かっていた
スーツを着た男たちは今も盗む瞬間を狙い続けている
サイレンを聴いて目を覚ませなくても間違っていなかった
巡礼の日
夜
鳥の悲鳴がむなしく響いた
いつもより世界が低俗に見えた
「今日からよろしくね」
スーツ姿の男が笑う
サイレント & トーキー
踊り出したくなる
キューを出す瞬間に笑い出したくなる
一呼吸で夜を越えてしまう
トラジディ & コメディ
埋め尽くしてゆくよ
今や誰ひとり満足していない
いのちに意味を求め続けている
巡礼の日
きみは羽のないその体で走り回っていた あの日
いつか恋しさに苛まれて不自由になってしまうだろうに
巡礼の日