blanc
フローリングはまだ暖かい
太陽の居着いた午後に
窓際 眠るモンステラ
音もなく忍び寄る変化
晴れた日には自転車に乗って
監視塔に出かけよう
風が撫ぜた
立入禁止の看板の向こうへ
フローリングはまだ暖かい
斜陽に翳りだした部屋
あなたが遺した緑が深く生い茂って
静かに確かに息づく箱庭
火を放った幼い思い出
灰になっていく楽園
風が爆ぜた
残響を乗せてフェンスの向こうまで
あなたはいた
カーテンが透かす光のなか
白いマグと数冊の恋愛小説
歳をとればいずれわかるさ
出会いや別れの意味も
胸を刺す痛みさえ安らかな音を奏でてみせる
今 この部屋を抜け出そう
帰りを待たれていようとも
目に見えないいくつもの待ち針がぼくらを繫ぎとめる
からっぽさえ愛せるなら
いつだってどこにでも行ける
We go.
フローリングはまだ暖かい
味気ない白い直方体
窓際 伸びたモンステラ
それだけがあなたと過ごした時間だ
blanc